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性ホルモンと犬の健康への影響について

性ホルモンと犬の健康への影響

犬の性ホルモンの基本知識
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雄犬のテストステロン

精巣から分泌される男性ホルモンで、精子形成や筋肉量維持に関与

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雌犬のエストロゲン

卵巣から分泌される女性ホルモンで、発情周期と生殖機能を調整

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ホルモンバランスの重要性

適切な分泌レベルが犬の健康維持に不可欠

性ホルモンの犬における基本的役割

犬の性ホルモンは生殖機能だけでなく、全身の健康に深く関わる重要な生体物質です 。雄犬では精巣から分泌されるテストステロンが主要な性ホルモンとして機能し、精子の形成、生殖器の発育促進、筋肉量の維持などに関与しています 。雌犬では卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンが中心的な役割を果たし、発情周期の調整、排卵の促進、妊娠の維持に必要不可欠です 。

参考)体のホルモンについて|犬と猫にとって大切なホルモンの役割につ…

これらの性ホルモンは視床下部-下垂体-性腺軸(HPG軸)によって精密に調節されており、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が上位のコントロール機能を担っています 。特に発情開始前には血中黄体形成ホルモン(LH)の分泌パターンが変化し、その後エストロゲンおよびプロゲステロンの分泌量が増加することが研究により明らかになっています 。

参考)KAKEN href=”https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10839011/” target=”_blank”>https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10839011/amp;mdash; 研究課題をさがす

性ホルモン関連性皮膚疾患の特徴

性ホルモンの分泌異常は、犬において特徴的な皮膚疾患を引き起こすことがあります 。主に中高齢の未去勢・未避妊犬で稀に認められる疾患で、性ホルモンのバランスが崩れることにより発症します 。雄犬では男性ホルモンであるエストロゲンやアンドロゲンの過剰症により、体幹部で左右対称性の脱毛や脂っぽくべたついた皮膚炎が生じることがあります 。

参考)犬の性ホルモン関連性皮膚症|脱毛が治らない犬の飼い主さん、避…

この疾患は、卵巣や精巣の腫瘍化に起因することが多く、特に精巣腫瘍には卵巣嚢腫、顆粒膜細胞腫、セルトリ細胞腫、間細胞腫、精細胞腫などが含まれます 。これらの腫瘍から分泌されるエストロゲンやアンドロゲンといった性ホルモンが、皮膚における脱毛や色素沈着などの症状を引き起こすのです 。

性ホルモンによる精巣腫瘍の影響

犬の精巣腫瘍は性ホルモンの異常分泌により様々な全身症状を呈する疾患です 。特に潜在精巣(停留睾丸)を有する犬では、正常な位置にある場合よりも腫瘍が発生しやすく、お腹の中の高温環境が腫瘍化のリスクを高めることが知られています 。

参考)犬の精巣腫瘍について|去勢手術で予防できる病気│永原動物病院…

精巣腫瘍の症状として、精巣の腫大や硬化以外に、性ホルモンの異常分泌による脱毛、色素沈着といった皮膚の変化、乳房の腫脹(雌性化)、貧血などが見られることがあります 。診断には触診による精巣チェック、血液検査、レントゲン検査、細胞診などが行われ、血中のエストロゲン濃度測定は特にセルトリ細胞腫の診断に有効です 。

参考)【獣医師監修】できれば予防を!犬の精巣腫瘍について解説!

性ホルモンと乳腺腫瘍の関連性

犬の乳腺腫瘍は女性ホルモンの影響を受けて発症する疾患で、避妊手術の実施時期によって発症リスクが大きく変わります 。初回発情前に避妊手術を行った場合の発症率は0.05%と極めて低く、2回目の発情以前では8%、3回目の発情以降では26%まで上昇することが報告されています 。

参考)犬の乳腺腫瘍の症状と原因、治療法について

この疾患は主に10歳以上の高齢犬に発症しやすく、プードル、イングリッシュ・セッター、ボストン・テリア、コッカー・スパニエルなどの犬種で特に発症しやすいとされています 。左右合わせて10個ある乳腺のうち、特に股に近い第4乳腺、第5乳腺にできやすい傾向があり、定期的な触診による早期発見が重要です 。

性ホルモンバランス異常の独自的な対処法

性ホルモンバランスの異常を早期に発見するためには、日常的な観察と定期的な健康チェックが重要です。飼い主が行える独自の観察方法として、皮膚の対称性脱毛パターンの確認、乳腺部の触診、雄犬における精巣の大きさや形状の変化の観察があります。

最新の研究では、犬の毛や爪を用いたホルモン濃度測定が注目されており、血液検査に比べて長期間のホルモン動態を評価できる利点があります 。この手法により、テストステロン、17β-エストラジオール、プロゲステロンの濃度変化を retrospective に評価することが可能になっています 。また、GnRHアゴニストであるデスロレリンインプラントを用いた化学的去勢は、外科的去勢の代替手段として有効性が確認されており、可逆的な繁殖制御を可能にしています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10339877/

性ホルモン関連性皮膚症の治療は雌ならば避妊手術、雄ならば去勢手術を実施し、一般的に外科手術後数か月で皮膚症状の改善がみられます 。去勢・避妊手術は性ホルモンが原因となる病気の予防、望まれない妊娠の防止、性ホルモンに関連する問題行動の抑制という3つの主要なメリットをもたらします 。

参考)去勢•避妊手術のメリット・デメリットについて

適切な時期に手術を実施することで、前立腺肥大症、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア(雄犬)、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍(雌犬)といった性ホルモン関連疾患を効果的に予防できることが科学的に証明されています 。

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