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犬 病名 一覧と症状から探す病気ガイド

犬 病名 一覧と症状

犬の主な病気カテゴリー
🩺

皮膚疾患

皮膚炎、アトピー、膿皮症など、犬の疾患の中で最も多いカテゴリー

🦴

整形外科疾患

膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニア、骨折など、運動器に関わる疾患

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内科疾患

心臓病、糖尿病、腎臓病など、内臓に関わる重要な疾患

犬の健康管理において、さまざまな病気を理解することは獣医療従事者にとって必須のスキルです。本記事では、犬がかかりやすい病気を体系的に分類し、その症状や治療法について詳細に解説します。日本で多く見られる犬の疾患を網羅的にカバーし、診断の一助となる情報を提供します。

犬の皮膚炎と外耳炎の診断ポイント

犬の疾患の中で最も多いとされるのが皮膚関連の病気です。特に皮膚炎と外耳炎は、犬の病気ランキングでも上位に位置しています。

皮膚炎の主な症状には以下のようなものがあります:

  • 過度の掻痒感(かゆみ)
  • 皮膚の発赤や炎症
  • 脱毛
  • フケの増加
  • 皮膚の肥厚化

外耳炎の典型的な症状としては:

  • 耳を頻繁に掻く行動
  • 耳からの悪臭
  • 耳垢の増加
  • 耳の内側の発赤
  • 頭を振る行動の増加

これらの疾患の原因は多岐にわたりますが、アレルギー(食物アレルギー、環境アレルギーなど)、寄生虫感染(ダニ、ノミなど)、細菌や真菌による二次感染が主な要因となっています。診断には、皮膚スクレイピング検査、細胞診、アレルギー検査などが有効です。

治療においては、原因の特定と除去が最も重要です。対症療法としては、抗炎症薬、抗生物質、抗真菌薬、免疫調節薬などが使用されます。また、シャンプー療法も効果的な場合が多いです。

日本獣医皮膚科学会の皮膚疾患診療ガイドライン – 最新の皮膚疾患治療プロトコルが詳細に記載されています

犬の整形外科疾患と膝蓋骨脱臼の最新治療法

整形外科疾患は、特に小型犬や高齢犬に多く見られます。その中でも膝蓋骨脱臼(パテラ)は、チワワやトイ・プードルなどの小型犬種に頻発する疾患です。

膝蓋骨脱臼の重症度は一般的に4段階(Grade 1〜4)に分類されます:

  • Grade 1: 手動で膝蓋骨を脱臼させることができるが、自然に整復される
  • Grade 2: 膝蓋骨が自然に脱臼し、自然に整復される
  • Grade 3: 膝蓋骨が常に脱臼しているが、手動で整復可能
  • Grade 4: 膝蓋骨が常に脱臼しており、手動でも整復不可能

症状としては、間欠的な跛行(びっこ)、後肢の異常な姿勢、痛みの表現などが見られます。重症度が高くなるほど、症状も顕著になります。

治療法は重症度によって異なります:

  • Grade 1〜2: 体重管理、適度な運動、関節サプリメントなどの保存療法
  • Grade 3〜4: 外科的治療(溝形成術、脛骨粗面転位術、内側関節包縫縮術など)

最新の治療法としては、関節鏡を用いた低侵襲手術や、3Dプリンティング技術を活用したカスタムインプラントなどが開発されています。これらの新技術により、術後の回復期間の短縮や合併症リスクの低減が期待されています。

日本獣医整形外科学会の最新研究発表 – 膝蓋骨脱臼の新しい手術テクニックについての情報が掲載されています

犬の呼吸器疾患と気管虚脱の診断基準

呼吸器疾患は、特に短頭種(フレンチ・ブルドッグ、パグなど)や小型犬に多く見られます。その中でも気管虚脱は、ヨークシャー・テリアやポメラニアンなどの小型犬種に頻発する疾患です。

気管虚脱の主な症状には以下のようなものがあります:

  • 「ガチョウの鳴き声」のような特徴的な咳
  • 運動不耐性
  • 呼吸困難
  • チアノーゼ(重症例)
  • 失神(重症例)

診断基準としては、以下の検査が重要です:

  1. 身体検査:頸部の触診で気管の異常を確認
  2. X線検査:吸気と呼気時のX線で気管の変形を評価
  3. 気管支内視鏡検査:気管の内腔を直接観察し、虚脱の程度を評価
  4. CT検査:より詳細な気道の評価が可能

気管虚脱の重症度は、気管内腔の狭窄度によってGrade 1(25%狭窄)からGrade 4(75%以上狭窄)まで分類されます。

治療法は重症度によって異なります:

  • 軽度〜中等度:体重管理、気道刺激物の回避、気管支拡張薬、抗炎症薬など
  • 重度:気管ステント留置術や外科的リング補強術などの外科的介入

予防法としては、肥満の防止、首輪ではなくハーネスの使用、過度な興奮の回避などが推奨されます。

日本獣医循環器学会のガイドライン – 気管虚脱を含む呼吸器疾患の診断と治療に関する最新情報が掲載されています

犬種別のなりやすい病気と遺伝的要因

犬種によって罹患しやすい疾患は大きく異なります。これは、それぞれの犬種が持つ遺伝的背景や身体的特徴に起因しています。以下に、日本で人気の高い犬種とそれぞれがなりやすい疾患について解説します。

チワワ

  • 水頭症:頭蓋骨に対して脳が大きく、脳脊髄液の循環異常を起こしやすい
  • 膝蓋骨脱臼:後肢の構造的特徴から発症リスクが高い
  • 気管虚脱:小型犬特有の気管軟骨の脆弱性が原因
  • 歯科疾患:小さな顎に対して歯の数が多いため、歯並びの問題が生じやすい

トイ・プードル

  • 進行性網膜萎縮症:遺伝的要因による網膜の変性疾患
  • レッグ・ペルテス病:大腿骨頭の血流障害による壊死
  • 外耳炎:垂れ耳の構造と被毛の特性から耳内環境が悪化しやすい
  • てんかん:遺伝的要因が示唆されている

ミニチュア・ダックスフンド

  • 椎間板ヘルニア:長い背骨と短い足の体型から椎間板への負担が大きい
  • 進行性網膜萎縮:遺伝的要因による視覚障害
  • 肥満傾向:体型的特徴から運動量が制限されやすい

柴犬

  • アトピー性皮膚炎:遺伝的要因と環境要因の複合的影響
  • 白内障:特に若齢性白内障のリスクが高い
  • 甲状腺機能低下症:自己免疫性甲状腺炎の発症率が高い

フレンチ・ブルドッグ

  • 短頭種気道症候群:平たい顔の構造による上気道閉塞
  • 脊椎異常:半椎体や椎間板疾患のリスクが高い
  • 皮膚疾患:皮膚の皺や被毛の特性から皮膚炎を発症しやすい
  • 熱中症:呼吸による体温調節機能の低下

これらの遺伝的要因を理解することで、予防医療や早期診断に役立てることができます。また、遺伝子検査の進歩により、一部の遺伝性疾患については繁殖前のスクリーニングが可能になっています。

日本獣医遺伝病学会のガイドライン – 犬種別の遺伝性疾患と遺伝子検査に関する最新情報が掲載されています

犬の症状から見る病気診断フローチャート

獣医療の現場では、飼い主から報告される症状から効率的に診断を進めることが重要です。以下に、主要な症状から考えられる疾患をフローチャート形式で解説します。

1. 消化器症状

  • 嘔吐
    • 急性(24時間以内に複数回):異物誤飲、急性胃炎、膵炎、中毒
    • 慢性(2〜3週間以上継続):炎症性腸疾患、腫瘍、腎不全、肝疾患
  • 下痢
    • 急性:食事性、感染性(ウイルス、細菌、寄生虫)、中毒
    • 慢性:炎症性腸疾患、吸収不良症候群、腫瘍、食物アレルギー
  • 食欲不振
    • 急性:感染症、中毒、異物、疼痛
    • 慢性:慢性疾患(腎不全、肝疾患、腫瘍)、内分泌疾患

    2. 皮膚症状

    • 掻痒感
      • 季節性:環境アレルギー、寄生虫(ノミ、ダニ)
      • 通年性:食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎
    • 脱毛
      • 対称性:内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)
      • 非対称性:細菌・真菌感染、外傷、自己免疫疾患
    • 皮膚腫瘤
      • 単発性:良性腫瘍(脂肪腫、乳頭腫)、悪性腫瘍(肥満細胞腫、扁平上皮癌)
      • 多発性:乳頭腫症、多発性組織球腫、転移性腫瘍

      3. 運動器症状

      • 跛行
        • 急性:外傷(骨折、捻挫)、異物(足底)
        • 慢性:変形性関節症、免疫介在性関節炎、腫瘍
      • 姿勢異常
        • 後肢:膝蓋骨脱臼、股関節形成不全、椎間板ヘルニア
        • 前肢:肘関節形成不全、橈尺骨成長不均衡

        4. 呼吸器症状

          • 乾性:気管虚脱、気管支炎、心臓病
          • 湿性:肺炎、肺水腫
        • 呼吸困難
          • 吸気性:上気道閉塞(短頭種気道症候群、喉頭麻痺)
          • 呼気性:下気道疾患(慢性気管支炎、喘息)
          • 混合性:肺炎、肺水腫、胸水

          5. 神経症状

          • 発作
            • 全身性:てんかん、中毒、低血糖、肝性脳症
            • 部分発作:脳腫瘍、脳炎
          • 運動失調
            • 急性:前庭疾患、脳炎、中毒
            • 慢性:変性性脊髄症、椎間板ヘルニア、腫瘍

            このフローチャートは初期評価のガイドラインとして活用できますが、正確な診断には詳細な病歴聴取、身体検査、適切な検査が必要です。また、複数の症状が同時に現れる場合は、より複雑な鑑別診断が必要となります。

            日本獣医臨床病理学会のガイドライン – 症状別の臨床検査アプローチに関する詳細情報が掲載されています

            犬の免疫介在性疾患と最新治療アプローチ

            免疫介在性疾患は、犬の病気の中でも診断・治療が難しい領域です。これらの疾患は、犬の免疫系が自身の組織を攻撃することで発症します。近年、獣医療の進歩により、これらの疾患に対する理解と治療法が大きく向上しています。

            主な免疫介在性疾患

            1. 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
              • 症状:突然の元気消失、粘膜の蒼白化、黄疸、暗色尿
              • 診断:クームス試験、血液塗抹標本での球状赤血球の確認、除外診断
              • 治療:免疫抑制療法(プレドニゾロン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル)、輸血療法
            2. 免疫介在性血小板減少症(ITP)
              • 症状:点状出血、紫斑、粘膜からの出血、血尿
              • 診断:重度の血小板減少、骨髄検査での巨核球の評価、除外診断
              • 治療:免疫抑制療法、緊急時の血小板輸血
            3. 関節リウマチ
              • 症状:多発性関節炎、朝のこわばり、発熱
              • 診断