シャントと犬の門脈体循環シャント
シャント犬の基本的な病態メカニズム
犬の門脈体循環シャントは、本来肝臓に向かうべき門脈血が異常な血管(シャント血管)を通って直接全身循環に流入する疾患です 。正常な状態では、消化管から吸収された血液は門脈を通って肝臓に運ばれ、そこで有害物質が解毒されてから全身に送られます 。しかし、シャントが存在する場合、毒素を含んだ血液が肝臓での解毒を受けずに全身に回ってしまうため、様々な健康問題を引き起こします 。
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この病気は犬では決して珍しくない疾患で、特に小型犬において高い発生率を示しています 。シャント血管の位置により肝内性と肝外性に分類され、それぞれ異なる犬種に好発する傾向があります 。
シャント犬に見られる特徴的な症状群
門脈体循環シャントの症状は多岐にわたり、初期には消化器系の症状が現れることが多いです 。具体的な症状として、食欲不振、嘔吐、下痢などが挙げられ、これらは飼い主が最初に気づきやすいサインです 。病気が進行すると、神経症状として元気がなくなる、ふらつく、ぐるぐると回り続ける、発作が起こる、昏睡状態に陥るなどの深刻な症状が現れます 。
参考)https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2019/09/portal-vein-shunt.html
特に注意すべきは食事後の症状悪化で、食事によって体内でアンモニアが増加し、元気がなくなることがあります 。また、成長期の子犬では体重が増えない、成長が遅いといった発育不良も重要な症状の一つです 。
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多飲多尿や黄疸(目の周りや口の色が黄色っぽくなる)なども見られ、これらは肝機能低下を示すサインとして重要です 。よだれの増加や小さな体格も特徴的で、特に小型犬の場合、生後6ヶ月を過ぎても他の犬と比べて明らかに体が小さいことが多いです 。
シャント犬の診断方法と検査手順
門脈体循環シャントの診断には、血液検査と画像診断が重要な役割を果たします 。血液検査では、アンモニアや胆汁酸の数値が異常に高くなることがあり、これらの数値を測定することで肝臓の解毒機能が正常に働いているかを確認できます 。低アルブミン血症や低血糖、低血中尿素窒素なども見られ、肝機能低下を示す重要な指標となります 。
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超音波(エコー)検査では、異常な血管(シャント血管)の有無や肝臓の大きさ、血流の異常を確認します 。ただし、小さなシャント血管はエコー検査では見つかりにくいことがあるため、確定診断には他の検査を併用することが一般的です。
CT検査や血管造影検査は、シャント血管の正確な位置や大きさを把握するために実施され、手術計画の立案に重要な情報を提供します 。特にCTアンギオグラフィーは、シャント血管の詳細な解剖学的情報を得ることができ、治療方針の決定に役立ちます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9549965/
シャント犬の治療選択肢と手術方法
門脈体循環シャントの治療には内科的治療と外科的治療があり、先天性の場合は外科的なシャント血管の閉鎖が第一選択となります 。外科的治療は根本的な治療法として位置づけられ、シャント血管を閉鎖することで血液が正常な経路(肝臓)を通るように修正します 。
手術の成功率は高く、早期に手術を行うことで肝機能の回復が期待できます 。ただし、この手術は難易度が高く、特殊な設備等も必要となるため、二次診療施設や手術経験の多い病院に紹介されることもあります 。
内科的治療は、手術の前後や手術を行うことが困難な場合に選択され、輸液療法、食事療法、肝保護剤などの投薬、肝性脳症の管理などが含まれます 。特に肝性脳症が見られる場合、ラクツロースの投与によりアンモニア産生菌を減少させる治療が行われます 。
手術費用については、病院によって差がありますが、一般的に25万円程度から60万円程度の範囲で、造影検査や入院費を含めて総額33万円程度になることが多いとされています 。
参考)口コミ「信頼出来る院長先生。」 (イヌの門脈体循環シャント)…
シャント犬の予後と長期的な生活管理
門脈体循環シャントの予後は、早期に発見し適切な治療を行った場合、比較的良好です 。手術後は、肝臓の回復をサポートするために、適切な食事管理や定期的な診察が重要になります。術後の生活管理として、低たんぱくの療法食を継続し、状態に応じてフードの種類や量を獣医師と相談しながら調整していく必要があります 。
参考)門脈体循環シャント|アリアスペットクリニック 平塚湘南・西湘…
定期的な血液検査や画像検査を通じて、肝機能の回復状況やシャントの再発がないかを確認することも重要です 。過度な運動を避け、体への負担をできるだけ減らし、静かで落ち着いた環境を整えることで、ストレスの少ない生活を送ることができます。
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多くの犬は元気に回復し、通常の生活を送ることができますが、術後も肝臓の数値が完全には正常に戻らないこともあります 。それでも合併症がなく、日常生活の中で安定して過ごせていれば、予後は良好とされるケースが多くあります 。
早期発見のためには、小さい時からでもきちんと検査をしておくことが大切で、定期的な健康チェックも早期発見には重要な要素となります 。特に好発犬種を飼っている場合は、より注意深い観察と定期的な検査が推奨されます 。