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コルチゾールと犬の健康状態の関係

コルチゾールと犬の体内機能

コルチゾールが犬に与える影響
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ストレス対応機能

ストレスに対抗する重要なホルモンとして機能

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血糖値調整

糖代謝の調整と血糖値維持に不可欠

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免疫機能調整

免疫応答の調整と炎症の制御

コルチゾールの基本的な役割と犬への影響

コルチゾールは副腎皮質から分泌される重要なホルモンで、犬の生命維持に欠かせない機能を持っています 。この「抗ストレスホルモン」とも呼ばれる物質は、ストレスがかかった時に多く分泌され、犬がストレスに対抗できるよう支援する働きを担っています 。コルチゾールは糖代謝、免疫応答、血圧調整など多岐にわたる生体機能をコントロールしており、犬の健康状態を維持する上で中心的な役割を果たしています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11640126/

正常な範囲では生体の維持に不可欠なコルチゾールも、過剰または不足すると深刻な健康問題を引き起こします 。犬の血中コルチゾール基準値は1.0~6.0μg/dLとされており、この範囲を逸脱することで様々な病的症状が現れます 。興味深いことに、犬のコルチゾール分泌には日内変動があり、多くの個体で午前8時前後にピークを示すという特徴があります 。

コルチゾール異常による犬の症状と病態

コルチゾールの過剰分泌は犬に深刻な症状をもたらします 。多飲多尿は最も特徴的な症状の一つで、通常の犬の飲水量(体重1kgあたり60ml程度)を大幅に上回る摂水が見られ、1kgあたり100mlを超える場合は注意が必要です 。食欲増進と体重増加も典型的な症状で、コルチゾールの筋肉分解作用により筋肉量は減少する一方、腹部の膨満が顕著に現れます 。

参考)最近、動物病院での相談が増えている犬のストレス対策について

皮膚への影響も深刻で、両側性対称性の脱毛、皮膚の菲薄化、カルシウム沈着による皮膚の硬化などが生じます 。一方、コルチゾール不足の場合は元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少、震えなどの症状が現れ、これらは他の疾患と区別が困難なため見落とされやすい特徴があります 。特に注意すべきは、初期段階では症状が断続的に現れることが多く、ストレス状況下(ホテル預かり、トリミング等)でのみ症状が顕在化することもある点です 。

コルチゾール検査の種類と犬での測定方法

コルチゾール測定は現在、血液、唾液、毛髪、尿など複数の方法で実施可能で、動物の福祉と研究倫理の観点から非侵襲的な唾液・毛髪・尿検査の採用が増加傾向にあります 。血液採取によるストレス要因を避けるため、特に唾液検査は急性・慢性ストレス反応を信頼性高く反映できる方法として注目されています 。測定には化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)が用いられ、即日結果が得られる利点があります 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12070829/

ACTH刺激試験は犬のコルチゾール機能評価における標準的な検査法で、合成ACTH製剤を注射後、1時間後の血中コルチゾール値を測定します 。刺激後の値が8.0~18.0μg/dLであれば正常、24.0μg/dL以上でクッシング症候群、2.0μg/dL未満でアジソン病が示唆されます 。また、コルチゾール対ACTH比(CAR)を用いた診断法も開発されており、従来より経済的で効率的な検査選択肢となっています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4895572/

コルチゾール関連疾患の犬における診断と治療

クッシング症候群は犬における最も一般的なコルチゾール過剰疾患で、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれます 。原因の8~9割は下垂体腺腫による副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰分泌で、残り1~2割が副腎腫瘍による直接的なコルチゾール分泌亢進です 。治療にはトリロスタンが第一選択薬として用いられ、最近では人医療で使用されるオシロドロスタット(イスツリサ)の獣医療応用も期待されています 。

参考)https://www.pochi.co.jp/ext/magazine/2022/02/vets-column2201.html

アジソン病(副腎皮質機能低下症)はコルチゾールとアルドステロンの両方または一方が不足する疾患です 。日本では酢酸フルドロコルチゾン(フロリネフ)が主要な治療薬として使用され、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドの両方の機能を併せ持つため、定型アジソン病に対して非常に有効です 。確定診断にはACTH刺激試験が不可欠で、刺激後コルチゾール値が2μg/dL以下の場合はほぼアジソン病と診断されます 。

コルチゾールと犬の腸内環境の関係性

最新の研究により、コルチゾール異常は犬の腸内細菌叢にも深刻な影響を与えることが明らかになっています 。高コルチゾール血症の犬では腸内細菌の多様性が減少し、プロテオバクテリア門、アクチノバクテリア門、バクテロイデス属、エンテロコッカス属、コリネバクテリウム属、大腸菌属、プロテウス属の増加と、ファーミキューテス門の減少が観察されています 。これらの菌叢バランス異常は治療後も継続する傾向があり、長期的な健康リスクを示唆しています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11476382/

興味深いことに、作業犬として訓練された盲導犬では、一般の家庭犬と比較してコルチゾール基礎値が高く維持される傾向があり、これは作業に伴う認知プロセスに関連している可能性が示されています 。また、捜索救助犬とハンドラーの間には、検査時のストレス状況下で唾液コルチゾール値に強い相関関係が見られ、特に雌犬と女性ハンドラーのペアでこの傾向が顕著でした 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7222771/

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