アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの違い
コッカースパニエルには「アメリカンコッカースパニエル」と「イングリッシュコッカースパニエル」の2種類が存在します。この2種類は同じコッカースパニエルという名前を持ちながら、実は多くの違いがあります。愛犬選びで迷っている方にとって、これらの違いを理解することは非常に重要です。
アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの起源と歴史
まず、両者の歴史的な関係について理解しておきましょう。イングリッシュコッカースパニエルの祖先は、鳥猟犬として活躍していたイギリス土着のランドスパニエルと考えられています。この犬種は17世紀頃からヤマシギ(ウッドコック)猟に従事していたため、「コッカー」という名前が付けられました。
1620年、イングリッシュコッカースパニエルは移民とともにメイフラワー号でアメリカに渡りました。アメリカでは猟犬としてではなく、愛玩犬として飼う目的で改良が進められ、そこで生まれたのがアメリカンコッカースパニエルです。つまり、アメリカンコッカースパニエルの祖先はイングリッシュコッカースパニエルということになります。
この歴史的背景により、両者は異なる方向に発展していきました。イングリッシュコッカースパニエルは猟犬としての能力を保持し続けた一方で、アメリカンコッカースパニエルはより家庭犬として適した特徴に改良されていったのです。
アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの体格と大きさの比較
体格の違いは、両者を見分ける最も分かりやすいポイントの一つです。以下に詳しい比較を示します。
イングリッシュコッカースパニエル
- 体高:オス39~41cm、メス38~39cm
- 体重:約12.5kg~14.5kg
- 分類:中型犬
アメリカンコッカースパニエル
- 体高:36cm~38cm
- 体重:11kg~13kg
- 分類:小型犬(中型犬寄り)
この大きさの違いは、アメリカンコッカースパニエルがイングリッシュコッカースパニエルを愛玩犬として改良したものであることが関係しています。より家庭で飼いやすくするため、コンパクトなサイズに改良されたのです。
体格面では、イングリッシュコッカースパニエルが全体的にがっしりした力強い体格を持つのに対し、アメリカンコッカースパニエルはより小柄でコンパクトな体型をしています。
アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの顔つきと頭部の形状
顔つきの違いは、両犬種の最も印象的な違いの一つです。
アメリカンコッカースパニエル
- マズル(鼻先)が短い
- 丸い顔つき
- ほりが深くてクリっとした目
- 頭蓋骨は丸みを帯びている
- 可愛らしい印象を与える
イングリッシュコッカースパニエル
- マズル(鼻先)が長い
- シャープな顔立ち
- 聡明な印象
- マズルはやや角ばっている
- 頭蓋骨は平たい形状
この顔つきの違いは、それぞれの改良目的を反映しています。アメリカンコッカースパニエルは愛玩犬として可愛らしさを重視した結果、より丸くて親しみやすい顔つきになりました。一方、イングリッシュコッカースパニエルは猟犬としての機能性を保持し、より実用的でスポーティーな顔つきを維持しています。
アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの被毛の特徴
両犬種とも美しい被毛で知られていますが、その特徴には違いがあります。
共通の特徴
- ダブルコート(二重構造の被毛)
- 換毛期(春と秋)に大量の抜け毛
- シルキーで長い毛質
毛量の違い
- アメリカンコッカースパニエルの方が断然毛量が多い
- イングリッシュコッカースパニエルもボリュームがあるが、アメリカンほどではない
毛色のバリエーション
イングリッシュコッカースパニエルは20種類以上のカラーバリエーションを持つことで有名です:
- ブラック
- ゴールド
- オレンジ
- チョコレート&タン
- ブラック&ホワイト
- その他多数
アメリカンコッカースパニエルも豊富なカラーバリエーションがあり、3つのカテゴリーに分類されます:
毛質についても微妙な違いがあり、イングリッシュコッカースパニエルの毛は「まっすぐか僅かにウェーブがかかっている」のに対し、アメリカンコッカースパニエルはより豊かでふわふわした質感を持つことが多いです。
アメリカンコッカースパニエルとイングリッシュコッカースパニエルの性格と気質の違い
性格面での違いは、飼い主にとって非常に重要な選択要因になります。
イングリッシュコッカースパニエル
- 明るく陽気で遊ぶことが大好き
- 甘えん坊だが、賢いがゆえに飼い主の様子を見て甘えるのを我慢する
- 猟犬だけあって飲み込みが早く、しつけもしやすい
- 体力があり、スポーティーな足取りで力強く歩く
- やや繊細な面もある
- 従順で家族には愛情深い
アメリカンコッカースパニエル
- 神経質なところがなく、楽天的な性格
- 明るく人懐っこいので、よりペットに向いた性格
- 穏やか
- 活発な面もあるが、イングリッシュより落ち着いている
- 基本的にとても人なつっこく、初対面の人にも愛嬌を振りまく
しかし、アメリカンコッカースパニエルには注意すべき特徴もあります。アメリカの研究によると、飼い主への攻撃性と見知らぬ人に対して怖がる傾向が、他の人気犬種に比べてやや高いことがわかっています。これは適切なケアと社会化により改善できます。
雄雌による性格の違い
アメリカンコッカースパニエルでは、雄雌の性格差も報告されています:
- 雄:遊び心があり、活発で自発的な行動が見られる
- 雌:しつけや訓練が簡単で、飼い主との精神的つながりが強い
この性格の違いは、それぞれの歴史的背景と密接に関係しています。イングリッシュコッカースパニエルは猟犬としての能力を保持しているため、より訓練性能が高く賢い傾向があります。一方、アメリカンコッカースパニエルは愛玩犬として改良されたため、より人懐っこく家庭犬向きの性格になっています。
愛犬選びの参考として、これらの違いを十分に理解し、あなたのライフスタイルや好みに合った犬種を選ぶことが大切です。どちらの犬種も魅力的な特徴を持っており、適切な飼育とケアにより素晴らしいパートナーになることでしょう。両犬種とも運動量が必要で、定期的なブラッシングなどのケアが欠かせないことも覚えておいてください。