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歯周病(犬)症状と治療方法から予防まで徹底解説

歯周病(犬)症状と治療方法

犬の歯周病について知っておくべきこと
🦷

深刻な健康問題

犬の歯周病は口腔内の問題だけでなく、心臓、腎臓、肝臓などの全身の臓器にも悪影響を及ぼす可能性がある深刻な疾患です。

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高い発症率

3歳以上の犬の約8割が歯周病を発症しているといわれており、特に小型犬は発症リスクが高いとされています。

予防可能な疾患

適切な歯のケアを日常的に行うことで予防可能な疾患であり、早期発見・早期治療が重要です。

歯周病(犬)の主な症状と進行過程

犬の歯周病は、初期段階では気づきにくい病気ですが、進行するにつれて様々な症状が現れてきます。飼い主さんが愛犬の異変に早く気づくことができれば、より効果的な治療が可能になります。

歯周病の初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 口臭:歯周病の最も一般的な初期症状です。細菌が増殖することで不快な臭いが発生します。
  • 歯垢・歯石の蓄積:歯の表面に白っぽい歯垢や黄褐色の歯石が付着します。
  • 歯肉の腫れや赤み:健康な歯肉はピンク色ですが、炎症を起こすと赤く腫れてきます。
  • 歯肉からの出血:食事中や歯を触った時に出血が見られることがあります。

歯周病が進行すると、より深刻な症状が現れます。

  • 歯肉の退縮:歯の根元が露出し始めます。
  • 歯のぐらつき・脱落:歯を支える組織が損傷し、歯がぐらついたり抜け落ちたりします。
  • 食欲不振:歯の痛みにより食事を避けるようになります。
  • よだれの増加:口腔内の痛みにより唾液の分泌が増えます。
  • 顔の腫れ:特に目の下や頬の部分が腫れることがあります。

さらに重度の歯周病では、細菌感染が進み、頬に穴が開いて膿が排出されるケースもあります。これは非常に痛みを伴い、緊急の治療が必要です。

歯周病の進行過程は一般的に以下の4段階に分けられます。

  1. 第1段階(歯肉炎):歯肉のみに炎症が見られる状態です。この段階では適切なケアにより回復が可能です。
  2. 第2段階(軽度歯周炎):歯肉の炎症に加え、歯周ポケット(歯と歯肉の間の隙間)が深くなり始めます。
  3. 第3段階(中度歯周炎):歯を支える骨の25%〜50%が失われ、歯のぐらつきが見られ始めます。
  4. 第4段階(重度歯周炎):歯を支える骨の50%以上が失われ、歯の脱落リスクが非常に高くなります。

歯周病は口腔内だけの問題ではなく、心臓、腎臓、肝臓などの内臓にまで影響を及ぼす可能性があります。細菌やその毒素が血流に乗って全身に広がることで、さまざまな臓器に炎症を引き起こすことがあります。

歯周病(犬)の原因と発症リスク

犬の歯周病の主な原因は、歯垢(プラーク)中に存在する歯周病原細菌です。この細菌が増殖して歯肉に炎症を引き起こし、進行すると歯周組織まで破壊していきます。

歯垢は食べ物の残りかすや唾液中のタンパク質、細菌などが混ざり合ってできる粘着性のある膜です。放置すると数日で石灰化して歯石になります。犬は人間よりも唾液のpH値が高いため、歯垢が歯石に変わるスピードが非常に速いという特徴があります。

歯周病の発症リスクを高める主な要因は以下の通りです。

  • 不十分な歯のケア:定期的な歯磨きなどのオーラルケアが不足していると、歯垢や歯石が蓄積しやすくなります。
  • 犬種:小型犬は大型犬に比べて歯周病の発生率や進行率が高いとされています。これは顎が小さく歯が密集しているため、歯垢や食べ物のカスが溜まりやすいからです。
  • 年齢:年齢が上がるにつれて歯周病のリスクも高まります。特に3歳以上の犬では約8割が何らかの歯周病を発症しているというデータもあります。
  • 咬み合わせの問題:不正咬合(歯並びの悪さ)がある犬は、食べ物のカスが溜まりやすく、歯周病のリスクが高まります。
  • 乳歯の残存:永久歯が生えてきても乳歯が抜けずに残っている場合、歯が密集して清掃しにくくなります。
  • 食事内容:ドライフードよりもウェットフードの方が歯に付着しやすく、歯垢の形成を促進する傾向があります。
  • 噛むおもちゃの不足:野生の犬は硬い物を噛むことで自然に歯の清掃効果を得ていましたが、家庭で飼われている犬はそういった機会が少なくなっています。

また、免疫力の低下や糖尿病などの全身疾患も歯周病のリスクを高める要因となります。糖尿病の犬は歯周病にかかりやすく、また歯周病が糖尿病を悪化させるという悪循環が生じることも知られています。

日本獣医学会誌に掲載された研究では、犬の歯周病と全身疾患の関連性について詳しく説明されています

歯周病(犬)の全身麻酔下での治療法

犬の歯周病の治療は、その進行度によって方法が異なりますが、基本的にはすべて全身麻酔下で行われます。これは治療中の痛みを取り除くだけでなく、犬のストレスを軽減し、獣医師が口腔内を詳細に検査・治療できるようにするためです。

全身麻酔下での歯周病治療の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 術前検査:麻酔のリスクを評価するため、血液検査やレントゲン検査などを行います。
  2. 麻酔導入・維持:安全に全身麻酔をかけ、維持します。
  3. 口腔内詳細検査:歯科用チャートを作成し、歯周ポケットの深さ測定、歯のぐらつきの確認、レントゲン撮影などを行います。
  4. 治療処置:症状に応じた治療を実施します。
  5. 麻酔覚醒・術後管理:麻酔から覚醒させ、術後のケア方法を指導します。

歯周病の程度に応じた主な治療法は以下の通りです。

【軽度の歯周病(歯肉炎〜軽度歯周炎)の場合】

  • スケーリング:超音波スケーラーを使用して歯の表面や歯肉縁下の歯垢・歯石を除去します。
  • ポリッシング:スケーリング後、研磨剤を使って歯の表面を滑らかに磨き上げます。これにより歯垢の再付着を防ぎます。
  • 歯周ポケット洗浄:歯と歯肉の間の歯周ポケット内を洗浄液で清掃します。

【中度〜重度の歯周病(中度〜重度歯周炎)の場合】

  • ルートプレーニング:歯の根元に付着した歯垢や歯石を取り除き、表面を滑らかにします。
  • 歯周ポケット内薬剤注入:抗生物質などの薬剤を歯周ポケット内に注入して細菌感染を抑えます。
  • 歯肉切除術・歯肉剥離掻爬術:炎症を起こした歯肉組織を切除したり、歯肉を一時的に剥がして歯根の清掃を行います。
  • 抜歯:ぐらつきが著しい歯や、歯槽骨(歯を支える骨)の吸収が進んでいる歯は抜歯が必要になります。高齢犬の場合、数本から最大20本程度抜歯することもあります。

治療後は、抗生物質や鎮痛剤などの薬が処方されることが一般的です。また、治療効果を維持するためには、家庭での継続的なデンタルケアが不可欠です。

歯周病治療の費用は症状の重症度や必要な処置によって大きく異なりますが、一般的には9万円〜15万円程度かかることが多いです。検査費用、麻酔費用、処置費用、入院費用などが含まれます。

重要なのは、治療後のフォローアップです。定期的な検診を受け、獣医師の指導のもと家庭でのケアを継続することで、歯周病の再発を防ぐことができます。

歯周病(犬)の家庭でできる予防対策

犬の歯周病は適切なケアによって予防可能な疾患です。家庭で実践できる効果的な予防対策について詳しく解説します。

【歯磨きの習慣化】

歯周病予防の最も効果的な方法は、定期的な歯磨きです。理想的には毎日行うことが望ましいですが、週に2〜3回でも効果があります。

歯磨きに慣れさせるステップ。

  1. まずは顔や口の周りを触ることから始める
  2. 徐々に口を開けて歯に触れる練習をする
  3. 犬用歯ブラシや指サックブラシに慣れさせる
  4. 犬用歯磨き粉(人間用は使用不可)を少量使い、短時間から開始
  5. 少しずつ時間を延ばしていく

このプロセスを焦らず、各ステップで褒めながら進めることが重要です。特に子犬のうちから始めると、歯磨きを日常の一部として受け入れやすくなります。

【デンタルケア用品の活用】

歯磨き以外にも様々なデンタルケア用品があります。

  • デンタルトイ:噛むことで歯の表面を自然に清掃できるおもちゃ
  • デンタルガム・チュー:噛むことで歯垢を除去する効果がある
  • デンタルジェル・スプレー:歯垢の形成を抑制する成分を含む
  • デンタルウォーター:飲み水に混ぜて口腔内環境を整える
  • デンタルフード:歯の健康をサポートする特殊な形状や成分を含む食事

これらの製品は歯磨きの代替にはなりませんが、併用することで予防効果を高めることができます。

【食事の工夫】

食事も歯の健康に大きく影響します。

  • ドライフードは適度な硬さがあり、噛むことで歯の表面を清掃する効果が期待できます
  • 大きめのドライフードは、噛み砕く必要があるため歯垢除去に役立ちます
  • 歯の健康をサポートする成分(ポリリン酸ナトリウムなど)を含む特別なフードもあります

【定期的な獣医師によるチェック】

家庭でのケアに加えて、年に1〜2回は獣医師による口腔内チェックを受けることをおすすめします。早期発見・早期治療が重要です。

特に乳歯から永久歯に生え変わる時期(生後6ヶ月頃)には、必ず獣医師に口腔内をチェックしてもらいましょう。残存した乳歯を適切に抜歯することで、将来の歯周病リスクを減らすことができます。

【口腔内環境の日常チェック】

飼い主さん自身も定期的に愛犬の口腔内をチェックする習慣をつけましょう。

  • 口臭の変化
  • 歯肉の色や腫れ
  • 食欲不振や食べ方の変化
  • よだれの増加
  • 口に触れることへの嫌がり

これらの変化に気づいたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

日本小動物歯科研究会では、犬の口腔ケアについての詳しい情報が掲載されています

歯周病(犬)と年齢別の注意点と対策

犬の歯周病は年齢によって発症リスクや症状の特徴が異なります。年齢別に注意すべきポイントと対策について解説します。

【子犬期(〜1歳)】

この時期は歯の生え変わりが起こる重要な時期です。

  • 乳歯遺残への注意:永久歯が生えても乳歯が抜けないことがあります。特に小型犬では犬歯やその周辺の乳歯が残りやすいです。放置すると歯並びが悪くなり、歯垢が溜まりやすくなります。
  • 歯のケアへの慣れ:この時期に歯磨きなどのケアに慣れさせておくことで、生涯にわたって歯のケアがしやすくなります。
  • 噛むおもちゃの提供:適切な硬さのおもちゃを与え、噛む習慣をつけることで歯の自浄作用を促します。
  • 定期検診:生後6〜7ヶ月頃に獣医師による口腔内チェックを受け、乳歯の残存がないか確認しましょう。

【若齢〜成犬期(1〜7歳)】

歯周病の予防と早期発見が重要な時期です。

  • 定期的な歯のケア:理想的には毎日の歯磨き、最低でも週2〜3回のケアを習慣化しましょう。
  • 歯石の早期発見:歯石は最初は歯と歯肉の境目に薄い茶色や黄色の付着物として現れます。早い段階で獣医師に相談しましょう。
  • 年1回の専門的クリーニング:軽度の歯石がある場合は、年に1回程度の専門的クリーニングを検討しましょう。
  • 咀嚼を促す食事:ドライフードを中心とした食事により、適度な咀嚼を促し、自然な歯の清掃効果を得られます。

【シニア期(8歳〜)】

歯周病のリスクが高まる時期です。

  • 定期的なケアの徹底:高齢になると免疫力も低下するため、より丁寧なケアが必要です。
  • 食事の変化に注意:突然ドライフードを避けるようになった場合、歯の痛みが原因かもしれません。
  • 全身疾患との関連心臓病や腎臓病などの持病がある場合、歯周病との関連性に注意が必要です。歯周病菌が血流に乗って全身に広がり、これらの疾患を悪化させることがあります。
  • 麻酔リスクの評価:高齢犬の場合、歯科治療のための麻酔リスクが高まることがあります。事前の血液検査などで全身状態をチェックし、リスクを評価することが重要です。

【超高齢期(12歳〜)】

個体差が大きい時期ですが、多くの犬で歯の問題が顕著になります。

  • 残存歯の管理:残っている歯を守るために、より柔らかい食事やケアしやすいデンタル用品を選びましょう。
  • 痛みのマネジメント:歯の痛みがあると食欲不振につながります。痛みの兆候に敏感になり、早めに獣医師に相談しましょう。
  • 全身状態を考慮した治療:超高齢期では、全身麻酔によるリスクと歯科治療のメリットを慎重に比較検討する必要があります。場合によっては保存的な薬物療法が選択されることもあります。

年齢を問わず大切なのは、定期的な獣医師によるチェックと家庭でのケアの継続です。特に年齢が上がるにつれて、より頻繁なチェックが推奨されます。また、犬種や個体によっても歯の健康状態は大きく異なるため、獣医師と相談しながら、愛犬に最適なケアプランを立てることが重要です。

シニア犬の歯周病ケアについてより詳しく解説されたリソースはこちらをご参照ください