犬痙攣の基礎知識と対処法
犬痙攣の症状と発作の種類
犬の痙攣は、大脳皮質の異常な電気活動によって引き起こされる神経症状です。発作の程度によって「大発作」と「小発作」に分類されます。
大発作の症状 🔴
- 四肢を硬直させて倒れる
- 全身性の筋肉収縮とけいれん
- 口から泡を吹く
- 瞳孔が開き、意識を失う
- 失禁することもある
小発作(部分発作)の症状 🟡
- 意識はあるが筋肉に震えが現れる
- 局所的な筋肉のけいれん
- 足をバタバタさせるような動き
- 体を弓なりに反らす動作
発作の持続時間は通常数十秒から数分間ですが、重積発作と呼ばれる2分以上続く発作や連続する発作は生命に関わる危険があります。
犬痙攣を引き起こす主な原因
犬の痙攣の原因は多岐にわたり、適切な診断が重要です。
脳神経系の疾患 🧠
代謝性疾患 🩺
中毒・薬物 ☠️
その他の要因 💡
- 心疾患による循環障害
- 熱中症による体温上昇
- 強度のストレス
- 筋肉疲労
犬痙攣発作時の適切な対処法
痙攣発作を目撃した際の冷静で迅速な対応が愛犬の命を救います。
発作中の緊急対応 🚨
- 安全確保:周囲の危険物を除去し、犬を安全な場所に移動
- 頭部保護:クッションなどで頭をぶつけるのを防ぐ
- 環境調整:照明を暗くし、騒音を避ける
- 時間測定:発作の持続時間を正確に記録
- 動画撮影:可能であれば症状を記録
やってはいけないこと ❌
- 口の中に手や物を入れる
- 無理に体を押さえつける
- 大声で名前を呼ぶ
- 水をかけるなどの刺激を与える
獣医師への報告事項 📝
- 発作の持続時間と回数
- 発作前の異常行動の有無
- 発作の詳細な症状
- 発作後の回復状況
2分以上の発作や群発発作は即座に動物病院への搬送が必要です。
犬痙攣の診断と検査方法
犬の痙攣診断は除外診断が基本となり、段階的なアプローチが採用されます。
基本検査(Tier I) 🔬
- 血液検査:血糖値、肝腎機能、電解質バランス
- 尿検査:腎機能や代謝異常の確認
- 神経学的検査:反射や意識レベルの評価
- 病歴聴取:発症年齢、発作パターンの詳細確認
画像診断(Tier II) 📸
- MRI検査:脳腫瘍や構造異常の詳細検査
- CT検査:脳出血や外傷の確認
- 脳脊髄液検査:炎症性疾患の診断
特殊検査(Tier III) 🧬
- 脳波検査:てんかん波形の確認
- 遺伝子検査:品種特異的てんかんの診断
特発性てんかんの診断基準では、6ヶ月齢から6歳の間に発症し、神経学的検査で異常が認められない場合に疑われます。血液検査で異常がなく、MRI検査でも構造的な問題が見つからない場合に診断されます。
犬痙攣の治療と長期管理
犬の痙攣治療は原因に応じたアプローチと発作コントロールが重要です。
急性期治療 🏥
- 抗てんかん薬の静脈投与:ジアゼパムやフェニトイン
- 呼吸管理:酸素投与や気道確保
- 体温管理:発熱時の冷却処置
- 輸液療法:脱水や電解質異常の補正
長期的な薬物療法 💊
- フェノバルビタール:第一選択薬として使用
- ゾニサミド:副作用が少ない新しい選択肢
- レベチラセタム:腎障害のある犬にも使用可能
- 臭化カリウム:従来から使用される補助薬
抗てんかん薬開始の基準は以下の通りです:
- 6ヶ月に2回以上の発作
- 重積発作や群発発作の発症
- 発作後症状が24時間以上継続
- 発作頻度や持続時間の悪化
生活管理とモニタリング 🏠
- 規則正しい生活リズム:ストレス軽減のため
- 定期的な血液検査:薬物濃度と副作用のチェック
- 発作日記の記録:治療効果の評価
- トリガー因子の回避:特定の誘因があれば除去
適切な治療により、月1回以下の発作頻度であれば犬の平均寿命に影響しないことが報告されています。薬物治療を受けるてんかん犬の約70%で発作のコントロールが可能です。
治療は長期にわたるため、獣医師との密な連携と飼い主の理解が成功の鍵となります。定期的な検査により薬物濃度を調整し、副作用を最小限に抑えながら最適な治療効果を得ることが目標です。