犬メス陰部の病気と症状
犬メス陰部に見られる膣炎の症状と原因
膣炎は、メス犬の膣（ちつ）に炎症が生じる病気で、年齢を問わず発症します。膣炎の主な症状として、以下のようなものが挙げられます：
- 陰部の異常な舐め行動 – 犬が陰部を頻繁に舐めたり、床や家具にこすりつける行動を見せます
- 分泌物の変化 – 透明、白、黄色、時には血が混じった分泌物が見られます
- 陰部周囲の腫れと赤み – 外陰部が赤く腫れあがり、触ると痛がることがあります
- 排尿異常 – 排尿回数の増加や排尿時の違和感を示すことがあります
膣炎の原因は犬の年齢によって異なります。発情期前の若いメス犬では、先天的な生殖器の奇形（円形狭窄、帯状狭窄、膣腔狭窄など）が主因となります。一方、発情期後や避妊手術後のメス犬では、ヘルペスウイルス、パスツレラ菌、レンサ球菌、大腸菌、マイコプラズマなどの感染が原因となることが多いです。
犬メス陰部の腫れを引き起こす子宮蓄膿症の危険性
子宮蓄膿症は、メス犬の子宮内に膿が蓄積する重篤な病気で、放置すると命に関わる可能性があります。この病気は通常、発情出血（生理）から約2ヶ月後に症状が現れることが特徴的です。
子宮蓄膿症の主な症状：
- 陰部からの膿性分泌物と悪臭
- 多飲多尿（水を大量に飲み、尿量が増加）
- 食欲不振と元気消失
- 腹部の膨満感
- 発熱
子宮蓄膿症には「開放型」と「閉鎖型」の2つのタイプがあります。開放型では子宮頸管が開いているため膿が外部に排出されますが、閉鎖型では膿が体内に蓄積されるため、より危険な状態となります。
治療法として：
- 外科的治療 – 卵巣子宮全摘出術（完全な根治が可能）
- 内科的治療 – 抗生物質とホルモン治療（繁殖価値の高い犬に適用）
犬メス陰部の正常な発情期変化と異常の見分け方
メス犬の発情期（ヒート）は、通常半年ごとに訪れる自然な生理現象です。発情期には陰部が通常の約3倍に腫れあがり、赤みが増すことが正常な変化として知られています。
正常な発情期の特徴：
- 陰部の腫れは徐々に始まり、発情期の終了とともに徐々に収束
- 出血は鮮血から徐々に薄くなり、約1-2週間で終了
- 犬の全身状態は良好で、食欲や元気に変化なし
- 陰部を軽く舐める程度の清潔行動
異常なサインとして注意すべき点：
- 2週間以上継続する出血 – 子宮蓄膿症の疑い
- 膿性の分泌物と悪臭 – 感染症の可能性
- 過度な舐め行動 – 痛みや違和感の存在
- 食欲不振や元気消失 – 全身症状の併発
偽妊娠という現象も知られており、妊娠していないにも関わらず妊娠時と同様のホルモンが分泌されることで、約2ヶ月間陰部の腫れや乳房の膨張が続くことがあります。
犬メス陰部周辺の皮膚トラブルとケア方法
メス犬の陰部周辺は、デリケートで様々な皮膚トラブルが発生しやすい部位です。尿やけは最も一般的な問題の一つで、排尿後の尿による毛の変色や皮膚の炎症を引き起こします。
皮膚トラブルの主な原因：
- カミソリ負けやトリミング刺激 – デリケートな皮膚への外的刺激
- 湿疹や細菌感染 – 陰部のシワに汚れが蓄積
- アレルギー反応 – 特定の洗剤やシャンプーへの反応
- ホルモン性皮膚炎 – 避妊手術後のホルモン変化による影響
日常ケアの実践方法：
清潔維持のポイント：
- 排尿後は湿らせた柔らかいタオルやペット用ウェットティッシュで優しく拭き取る
- 1日1回、ぬるま湯で陰部周辺を軽く洗浄
- 完全に乾燥させてから毛を整える
トリミングの重要性：
- 長毛種は月1回程度、陰部周辺の毛を短く整える
- 専門のトリマーに依頼することで安全にケア可能
- 毛が短いことで汚れの付着を防止し、観察しやすくなる
生活環境の改善：
- 寝床やケージの定期的な清掃
- 清潔な水の提供と適度な運動
- ストレス軽減のための環境整備
犬メス陰部の健康管理における予防的アプローチ
メス犬の生殖器系の健康を維持するためには、予防的なアプローチが非常に重要です。多くの獣医師が推奨する予防策として、適切な時期での避妊手術があります。
避妊手術の利点：
- 子宮蓄膿症の完全予防 – 子宮を摘出することで発症リスクを100%除去
- 乳腺腫瘍のリスク軽減 – 初回発情前の手術で発症率を大幅に低下
- 望まない妊娠の防止 – 計画外の繁殖を確実に防ぐ
- 発情期のストレス軽減 – ホルモン変動による不快感の除去
定期的な健康チェック項目：
日常観察のポイント：
- 陰部の色、大きさ、形状の変化を毎日チェック
- 分泌物の色、量、臭いの記録
- 排尿の頻度と量の観察
- 行動変化（舐める、こすりつける等）の記録
定期検診での確認事項：
- 年2回の生殖器系健康診断
- 膣鏡検査による内部状態の確認
- 細菌培養検査による感染症のスクリーニング
- 超音波検査による内部器官の評価
栄養管理と免疫力向上：
- ビタミンC – 感染症予防と免疫力向上に効果
- プロバイオティクス – 腸内環境改善による全身の健康維持
- オメガ3脂肪酸 – 炎症反応の抑制効果
- 適切な水分摂取 – 尿路系の健康維持
これらの予防的アプローチを継続することで、メス犬の生殖器系疾患のリスクを大幅に軽減し、愛犬の生活の質を向上させることができます。早期発見・早期治療が最も重要であるため、少しでも異常を感じた場合は迷わず獣医師に相談することが推奨されます。