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犬耳できものの原因と治療法について

犬耳できものの原因と症状

犬の耳のできものについて
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早期発見が重要

耳のできものは良性から悪性まで様々で、見た目だけでは判断できません

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症状を見逃さない

耳垂れ、臭い、首を傾げるなどの症状は受診のサイン

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専門的な診断

細胞診検査や病理検査による正確な診断が必要

犬耳できものの主な原因とメカニズム

犬の耳にできもの(腫瘤や腫瘍)が形成される原因は複数存在しますが、最も重要な要因として慢性的な炎症が挙げられます。特に外耳炎を繰り返すことで、耳道内の組織に過形成性あるいは異形成性の変化が生じ、最終的に腫瘍化することが知られています。

炎症による刺激が長期間続くと、正常な細胞の遺伝子(DNA)に変異が起こり、細胞が無秩序に増殖する腫瘍状態へと発展します。この過程は数か月から数年をかけて徐々に進行するため、初期段階での発見と治療が極めて重要となります。

また、犬の耳道構造も発症に影響を与えています。犬の外耳道はL字型に湾曲しており、この特殊な構造により湿度が保たれやすく、細菌の繁殖に適した環境が作られがちです。特に垂れ耳の犬種では通気性が悪く、より感染や炎症のリスクが高まります。

感染による炎症では、細菌やその他の微生物が耳道内で増殖することで組織の炎症反応が起こり、これがきっかけとなってできものが形成されることもあります。カプノサイトファーガ・カニモルサスなど犬の口腔内常在菌による感染も、まれではありますが重篤な症状を引き起こすことがあります。

犬耳できもの腫瘍の種類と特徴

犬の耳に発生する腫瘍は大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。良性腫瘍では耳垢腺腫や乳頭腫が最も多く見られ、これらは命を直接脅かすことは稀ですが、適切な治療を行わないと外耳炎などの二次的な問題を引き起こします。

良性腫瘍の特徴

  • 耳垢腺腫:耳道内の耳垢腺から発生する腫瘍で、ゆっくりと成長します
  • 乳頭腫:ウイルス性の腫瘍で、いぼ状の外見を呈することが多い
  • 皮膚組織球腫:若い犬に多く見られ、自然治癒することもある

悪性腫瘍の特徴

  • 耳垢腺癌:良性の耳垢腺腫が悪性化したもので、早期治療が重要
  • 扁平上皮癌:皮膚の表層から発生する悪性腫瘍で、比較的よく見られる
  • 基底細胞癌:皮膚の深部から発生し、局所的に浸潤性を示す

悪性腫瘍の場合、他の臓器への転移は比較的稀ですが、放置すると腫瘍が耳道軟骨に浸潤し、外科的な切除が困難になってしまいます。また、悪性腫瘍は増殖速度が速いため、早期発見と迅速な治療開始が予後を大きく左右します。

腫瘍の良性・悪性は外見だけでは判断できません。インターネット上には「良性腫瘍は白やピンク色、悪性腫瘍は黒や赤黒い色」といった情報もありますが、これらは確実な判断基準ではありません。正確な診断には細胞診検査や病理検査が必要不可欠です。

犬耳できもの症状の見極めポイント

耳の外側にあるできものは飼い主でも発見しやすいですが、耳道内のできものは見た目では確認が困難です。以下の症状が見られた場合は、耳道内にできものがある可能性を疑い、速やかに動物病院を受診することが重要です。

直接確認できる症状

  • 耳垂れ(膿性や血性の分泌物)
  • 強烈な悪臭(特に腫瘍が自壊した場合)
  • 耳の汚れの増加と質の変化
  • 耳介の腫れや変形

行動の変化による症状

  • 首を傾げる動作(斜頸)
  • 旋回運動や歩行の不安定
  • 眼振(眼球の異常な動き)
  • 呼びかけに対する反応の低下

これらの症状の中でも、特に神経症状(斜頸、旋回、眼振)が見られる場合は、腫瘍が中耳や内耳まで影響を及ぼしている可能性があり、緊急性が高い状態です。

耳血腫という別の病気もあり、これは耳介内の血管が破れて血液や漿液が溜まる状態です。急激に耳がパンパンに腫れる特徴があり、腫瘍とは区別して考える必要があります。

日常的な観察では、耳掃除の際に普段と違う感触や見た目の変化に気づくことが早期発見につながります。定期的な耳のケアと観察を習慣化することで、小さな変化も見逃さずに済みます。

犬耳できもの診断方法と検査

犬の耳のできものを正確に診断するためには、段階的な検査アプローチが必要です。まず、耳道の狭窄が軽度であれば、耳鏡という専用器具を使用して耳道内を直接観察し、腫瘍の存在や大きさ、位置を確認します。

しかし、耳道の狭窄が重度で内部が視認できない場合や、腫瘍の詳細な位置や浸潤の程度を調べる必要がある場合は、より高度な画像診断が必要となります。

画像診断の種類

  • CT検査:骨の構造や腫瘍の石灰化を詳しく観察できる
  • MRI検査:軟部組織のコントラストが良好で、腫瘍の範囲を正確に把握
  • X線検査:骨の破壊や変形を確認(補助的な検査として)

組織診断の手法

  • 細胞診検査:細い針で腫瘍に穿刺し、細胞を採取して顕微鏡観察
  • 組織生検:腫瘍の一部を切除して病理検査に提出
  • 切除標本の病理検査:手術で摘出した腫瘍全体の詳細な検査

細胞診検査は比較的簡単に実施できる検査で、良性か悪性かの推定が可能ですが、確定診断には病理検査が必要です。病理検査では腫瘍の種類、悪性度、切除縁の状態などが詳しく評価され、今後の治療方針決定に重要な情報を提供します。

また、全身状態の評価として血液検査や胸部X線検査なども実施し、手術の適応や麻酔のリスク評価を行います。特に高齢犬や他の疾患を持つ犬では、これらの検査結果が治療選択に大きく影響します。

診断過程では、外耳炎や中耳炎などの併発疾患の有無も同時に評価し、包括的な治療計画を立案することが重要です。単純な腫瘍切除だけでなく、感染のコントロールや炎症の管理も同時に行う必要があります。

犬耳できもの治療選択肢と予防ケア

犬の耳のできものに対する治療法は、腫瘍の種類、大きさ、位置、および犬の全身状態によって決定されます。基本的には外科的切除が根本的な治療法となりますが、術式の選択は慎重に行う必要があります。

外科治療の選択肢

  • 垂直耳道切除:切除範囲が小さく身体への負担が少ないが、再発率が高い
  • 全耳道切除:広範囲の切除により再発率は低いが、聴力への影響がある
  • 鼓室胞骨切り術:最も根治的な術式だが、高度な技術と経験が必要

手術方法の選択では、腫瘍の完全切除と機能保存のバランスを考慮します。垂直耳道切除は外耳道の垂直部分のみを切除する方法で、聴力への影響は最小限に抑えられますが、水平耳道に腫瘍が残存する可能性があります。

一方、全耳道切除や鼓室胞骨切り術は聴力を完全に失うことになりますが、腫瘍の完全切除と再発防止の観点では最も確実な方法です。飼い主との十分な相談のもと、犬の生活の質と根治性を天秤にかけて最適な術式を選択します。

補助療法と術後管理

  • 放射線療法:手術で完全切除できなかった場合の追加治療
  • 化学療法:悪性度が高い場合や転移がある場合
  • 抗炎症薬:術後の炎症反応のコントロール
  • 抗生物質:感染予防と既存感染の治療

予防とホームケア

耳腫瘍の完全な予防法は確立されていませんが、外耳炎との関連性が示唆されているため、外耳炎の早期発見と適切な治療が腫瘍化の予防に重要です。

日常的な耳のケアとして、定期的な耳掃除と観察を推奨します。ただし、過度な耳掃除は逆に炎症を悪化させる可能性があるため、正しい方法を獣医師から指導を受けることが大切です。

特に垂れ耳の犬種では通気性が悪いため、耳の乾燥を心がけ、湿度の管理に注意を払います。また、アレルギー性皮膚炎がある犬では、アレルギー管理も重要な予防策となります。

定期健診では、耳鏡による耳道内の詳しい観察を受け、早期発見に努めることが最も効果的な対策です。特に中高齢犬では年2回以上の定期チェックを推奨します。