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犬の心臓の病気一覧と症状や治療法について

犬の心臓の病気一覧

犬の心臓病の基本情報
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発症率

全ての犬の10~15%が心臓疾患に罹患し、10歳以上の犬では30%以上に上昇

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死因ランキング

犬の死因の第2位(がんに次いで多い)

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早期発見のポイント

初期症状が少なく、定期検診での心雑音の発見が重要

犬の心臓病は、現代のペット医療において非常に重要な疾患群です。疫学調査によると、全ての犬の10~15%が何らかの心臓疾患に罹患しており、特に10歳以上の高齢犬では30%以上、小型犬においては50%以上が心臓疾患を持つというデータがあります。

心臓病は犬の死因の第2位を占め、がんと合わせると死因の60%以上を占める重大な疾患です。心臓がポンプとしての機能を正常に果たせなくなることで、全身に十分な酸素や栄養を送ることができなくなり、様々な症状を引き起こします。

心臓病は大きく分けて「先天性心疾患」と「後天性心疾患」に分類されます。犬の心疾患の95%は後天性のものですが、それぞれの特徴と代表的な疾患について詳しく見ていきましょう。

犬の先天性心疾患の種類と特徴

先天性心疾患は、生まれつき心臓やその周囲の血管に異常がある病気です。主な先天性心疾患には以下のようなものがあります。

  1. 動脈管開存症
    • 最も発症率が高い先天性心疾患
    • 胎児期に存在する肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管が閉じずに残っている状態
    • プードル、マルチーズ、コリー系の犬種に多い
  2. 心室中隔欠損症
    • 左右の心室を分ける壁(心室中隔)に穴が開いている状態
    • 穴のサイズにより症状の重症度が異なる
    • 様々な犬種で発症が見られる
  3. 心房中隔欠損症
    • 左右の心房の間に穴が開いている状態
    • 血液の混合により酸素濃度の低下を引き起こす
  4. 肺動脈弁狭窄症
    • 肺動脈弁の狭窄により右心室から肺動脈への血流が阻害される
    • チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアなどの小型犬
    • フレンチ・ブルドッグ、ビーグル、ミニチュア・シュナウザーなどにも多い
  5. 大動脈弁狭窄症
    • 大動脈弁の狭窄により左心室から大動脈への血流が阻害される
    • レトリーバー、ボクサー、ニューファンドランド、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬に多い

先天性心疾患は、生後すぐに重篤な症状が現れることもあれば、成長してから症状が顕在化することもあります。早期発見と適切な治療が予後を大きく左右します。

犬の後天性心疾患と僧帽弁閉鎖不全症の特徴

後天性心疾患は、主に加齢によって発症する心臓の病気です。犬の心疾患の95%を占め、特に高齢犬に多く見られます。後天性心疾患の中でも最も多いのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。

僧帽弁閉鎖不全症の特徴

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が正しく閉じなくなることで、血液が逆流してしまう病気です。特に中高齢の小型犬に多く見られ、トイ・プードルやマルチーズなどの犬種で発症率が高いとされています。

この疾患の特徴として、初期段階ではほとんど症状が現れないことが挙げられます。多くの場合、定期健診で獣医師が心雑音を聴取することで発見されます。症状が現れ始めた時点では、すでに病気が中期から後期段階に進行していることが少なくありません。

主な症状

  • 咳(特に夜間や運動後に増加)
  • 呼吸が荒くなる(安静時でも呼吸数が増加)
  • 運動を嫌がる(散歩や遊びを避けるようになる)
  • 疲れやすくなる
  • 食欲低下
  • 重症化すると、腹水や浮腫(むくみ)が見られることも

僧帽弁閉鎖不全症は慢性進行性疾患であるため、外科手術をしない限り病気そのものが改善することはありません。そのため、早期発見と適切な治療により病気の進行を遅らせることが非常に重要です。

犬の拡張型心筋症と大型犬の心臓病リスク

拡張型心筋症は、主に大型犬に見られる後天性心疾患です。心臓の筋肉(心筋)が薄くなり、心臓の収縮力が低下することで、ポンプ機能が障害される病気です。

拡張型心筋症の特徴

  • 主に3~10歳の大型犬に発症
  • メスよりオスに多い傾向がある
  • 初期では症状が現れにくい
  • 進行すると咳や呼吸困難、腹水(お腹が膨れる)などの症状が出現
  • 重症例では失神や突然死のリスクもある

発症しやすい犬種

  • ドーベルマン・ピンシャー
  • グレート・デーン
  • アイリッシュ・ウルフハウンド
  • セント・バーナード
  • ボクサー
  • コッカー・スパニエル

拡張型心筋症の診断には、心エコー検査が最も有効です。心臓の大きさや壁の厚さ、収縮機能などを詳細に評価することができます。また、心電図検査や胸部X線検査も補助的に行われます。

治療は主に薬物療法が中心となり、心臓の収縮力を高める薬剤や利尿剤、血管拡張剤などが用いられます。また、不整脈が認められる場合は抗不整脈薬も使用されます。

大型犬を飼育している場合は、特に中年齢以降の定期的な心臓検査が重要です。早期発見により適切な治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、愛犬の生活の質を維持することができます。

犬の心臓病の診断方法と最新治療アプローチ

犬の心臓病の診断には、様々な検査方法が用いられます。それぞれの検査の特徴と、現在行われている治療アプローチについて解説します。

診断方法

  1. 聴診
    • 最も基本的な検査で、心雑音や不整脈を検出
    • 初期の心臓病発見に重要な役割を果たす
  2. 胸部X線検査
    • 心臓の大きさや形状、肺の状態を評価
    • 心拡大や肺水腫の有無を確認できる
  3. 心エコー検査
    • 心臓の構造や機能をリアルタイムで観察できる最も重要な検査
    • 弁の状態、心室の収縮力、血流の方向などを詳細に評価
  4. 心電図検査
    • 心臓の電気的活動を記録
    • 不整脈の検出に有効
  5. 血液検査
    • 心臓病のバイオマーカー(NT-proBNP、トロポニンIなど)を測定
    • 腎機能や電解質バランスも評価

最新の治療アプローチ

  1. 薬物療法
    • ACE阻害薬:血管を拡張し、心臓の負担を軽減
    • 利尿剤:余分な水分を排出し、心臓の負担を軽減
    • 強心薬:心臓の収縮力を高める
    • ベータ遮断薬:心拍数を下げ、心臓の酸素消費量を減らす
    • 抗不整脈薬:不整脈を抑制
  2. 外科的治療
    • 僧帽弁形成術:僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術
    • 人工弁置換術:重度の弁膜症に対する治療
    • 先天性心疾患に対するカテーテル治療
  3. 栄養管理
    • 塩分制限食:体内の水分貯留を防ぐ
    • オメガ3脂肪酸:抗炎症作用と心機能改善効果
    • タウリン:特に拡張型心筋症の一部の症例で効果的
  4. 運動管理
    • 適度な運動:過度な運動は避け、軽い散歩などを推奨
    • 体重管理:肥満は心臓に負担をかけるため、適正体重の維持が重要

近年では、獣医療の進歩により、犬の心臓病に対する治療オプションが拡大しています。特に注目されているのが、僧帽弁閉鎖不全症に対する低侵襲手術の開発です。従来の開胸手術に比べ、回復が早く、高齢犬にも適用できる可能性があります。

日本獣医師会雑誌に掲載された犬の心臓病治療に関する最新研究

また、遺伝子検査技術の発展により、特定の犬種における心臓病のリスク評価も可能になりつつあります。これにより、高リスクの犬に対する予防的アプローチも期待されています。

犬の心臓病と日常ケアの重要性

心臓病と診断された犬の日常ケアは、病気の進行を遅らせ、生活の質を維持するために非常に重要です。適切なケアにより、愛犬の快適な生活をサポートすることができます。

日常ケアのポイント

  1. 適切な食事管理
    • 塩分制限:過剰な塩分は体内に水分を貯留させ、心臓に負担をかける
    • カロリー管理:肥満は心臓への負担を増加させる
    • 心臓病用の療法食:獣医師の指導のもと、専用フードの使用を検討
  2. 適切な運動管理
    • 過度な運動を避ける:激しい運動は心臓に負担をかける
    • 短時間の散歩:天候の良い日に複数回に分けて行う
    • 暑さ・寒さを避ける:極端な気温は心臓に負担をかける
  3. ストレス管理
    • 静かで落ち着いた環境を提供
    • 急激な環境変化を避ける
    • 愛犬が安心できるスペースを確保
  4. 薬の管理
    • 処方された薬を指示通りに投与
    • 投薬スケジュールを守る
    • 副作用の兆候に注意
  5. 定期的な健康チェック
    • 呼吸数のモニタリング:安静時の呼吸数増加は悪化のサイン
    • 体重の定期測定:急激な増減は注意が必要
    • 活動レベルの観察:元気がない、疲れやすいなどの変化に注意
  6. 定期的な獣医師の診察
    • 処方薬の効果確認
    • 病状の進行度チェック
    • 必要に応じた治療計画の調整

緊急時の対応

以下の症状が見られた場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

  • 呼吸困難(口を開けて呼吸する、呼吸が速くなるなど)
  • 失神
  • 持続的な咳
  • 極度の元気消失
  • 食欲不振
  • 腹部の膨満

心臓病と診断された犬の飼い主にとって、日常の観察と適切なケアは非常に重要です。獣医師と密に連携し、愛犬の状態に合わせたケアを行うことで、心臓病があっても快適な生活を送ることができます。

犬の心臓病予防と早期発見のためのチェックポイント

心臓病は完全に予防することは難しいですが、早期発見と適切な管理により、進行を遅らせることが可能です。特に高リスク犬種を飼育している場合は、以下のポイントに注意しましょう。

定期健診の重要性

心臓病、特に僧帽弁閉鎖不全症などは初期症状がほとんど現れないため、定期的な獣医師による健康診断が非常に重要です。

  • 若齢〜成犬:年1回の健康診断
  • 7歳以上の高齢犬:年2回の健康診断
  • ハイリスク犬種(小型犬や特定の大型犬種):より頻繁な検診を検討

日常的な観察ポイント

愛犬の日常的な観察も早期発見につながります。以下のような変化に注意しましょう。

  1. 呼吸の変化
    • 安静時の呼吸数増加(正常は1分間に15〜30回程度)
    • 呼吸が浅く速くなる
    • 呼吸時の努力(腹部の動きが大きくなる)
  2. 活動レベルの変化
    • 運動耐性の低下(散歩を嫌がる、すぐに疲れる)
    • 遊びへの興味減少
    • 階段の上り下りを避ける
  3. 咳の出現
    • 特に夜間や朝方の咳
    • 運動後の咳
    • 横になった時の咳
  4. その他の変化
    • 食欲不振
    • 体重の急激な変化(特に増加)