犬おしり舐めてる原因と対処法
犬おしり舐める習性とグルーミング行動
犬が自分のおしりを舐める行動は、基本的には正常なセルフグルーミングの一環です。犬は本能的に自分の体を清潔に保とうとする習性があり、特に排便後におしりを舐めることは珍しい行動ではありません。
この行動が正常な範囲内かどうかを判断するポイントは以下の通りです。
- 頻度:1日に数回程度の軽い舐める行動
- 時間:短時間で終わる
- タイミング:排便後や体を清潔にしたい時
- 他の症状:痛みや不快感を示す様子がない
健康な犬であれば、これらのグルーミング行動は自然な生理現象として受け入れても問題ありません。ただし、頻繁に舐めたり噛んだりするようになった場合は注意深く観察する必要があります。
特に高齢犬の場合、肛門括約筋の筋力が衰えることで便のキレが悪くなり、違和感から舐める行動が増加することがあります。これは加齢による自然な変化の一つですが、過度になる場合は獣医師への相談をお勧めします。
犬おしり舐める肛門腺トラブルの症状
犬のおしりを舐める行動で最も多い原因が肛門腺(肛門嚢)のトラブルです。肛門腺は犬や猫のような肉食動物が持つ器官で、肛門を中心に時計の4時と8時の方向に左右一つずつ存在します。
肛門腺の正常な機能と分泌物の特徴。
- 位置:肛門周囲の左右対称の位置
- 分泌物:アポクリン腺と皮脂腺から作られる
- 色:茶色、緑色、黄色、黒色など様々
- 形状:乾燥状、液体状、泥状など
- 機能:縄張りの主張や個体識別
肛門腺にトラブルが発生すると以下のような症状が現れます。
肛門嚢炎の症状
- おしりを頻繁に舐める
- 床や地面におしりをこすりつける(スクーリング)
- しっぽを追いかけてくるくる回る
- 肛門周囲の腫れや赤み
- 強い臭いのする分泌物
肛門嚢炎が悪化すると、分泌液が膿状になり、最終的には皮膚が破れて膿が外に出ることもあります。このような状態になる前に、早期の治療が重要です。
小型犬は特に肛門腺が詰まりやすい傾向があるため、定期的な肛門腺しぼりが予防として効果的です。ただし、慣れていない場合は無理をせず、動物病院やペットサロンで専門家に依頼することをお勧めします。
犬おしり舐める寄生虫感染のサイン
寄生虫感染も犬がおしりを舐める重要な原因の一つです。特に内部寄生虫と外部寄生虫の両方が関係することがあります。
内部寄生虫による影響
犬の腸内に生息する寄生虫には以下のようなものがあります。
- サナダムシ(瓜実条虫):肛門周囲に白い米粒状の断片が付着
- 回虫:下痢や軟便を引き起こし、肛門に炎症を起こす
- 鞭虫:便の性状を悪化させ、肛門の違和感につながる
これらの寄生虫感染では、寄生虫の一部が肛門周囲に付着するため、犬は違和感を感じておしりを舐める行動を示します。また、便に寄生虫の断片や成虫が混じっていることもあるため、便の観察も重要です。
外部寄生虫による刺激
肛門周囲は被毛が薄く、外部からの刺激に敏感な部分です。以下のような外部寄生虫や刺激が原因となることがあります。
- ノミやダニによる刺咬
- 虫刺されによる痒み
- 皮膚の炎症反応
寄生虫感染の併発症状
- 食欲不振
- 下痢や軟便
- 体重減少
- 毛艶の悪化
- 元気がない
寄生虫感染が疑われる場合は、便検査による確定診断と適切な駆虫薬による治療が必要です。また、予防として定期的な駆虫薬の投与や清潔な環境の維持が重要になります。
犬おしり舐める皮膚炎と汚れの問題
肛門周囲の皮膚トラブルも、犬がおしりを舐める行動の原因となります。この部位は特に清潔にしていても便が微量に付着しやすく、傷があると感染症にかかりやすい環境です。
皮膚炎の種類と原因
皮膚炎による症状。
- 赤みや腫れ
- 痒みや痛み
- 湿疹や発疹
- 皮膚の乾燥や剥離
- 膿や浸出液
汚れによる問題
肛門周囲の汚れには以下のようなものがあります。
- 便の付着
- 尿による湿り
- 毛玉の形成
- 皮脂や汚れの蓄積
これらの汚れが長時間付着していると、皮膚の炎症や細菌の繁殖を招き、犬が違和感を感じておしりを舐める行動につながります。
乾燥による問題
おしりの乾燥も舐める行動の原因になります。乾燥すると皮膚がつっぱり、犬はうるおいを与えようとして舐めることがあります。特に冬季や乾燥した環境では注意が必要です。
予防として、定期的な肛門周囲の清拭や適切なグルーミングが効果的です。ただし、舐め続けることで皮膚の状態がさらに悪化することもあるため、早期の対処が重要です。
犬おしり舐める異常時の病院受診タイミング
犬がおしりを舐める行動が異常かどうかを判断し、適切なタイミングで動物病院を受診することは愛犬の健康を守るために重要です。
緊急受診が必要な症状
以下の症状が見られる場合は、速やかに動物病院を受診してください。
- 肛門周囲からの出血
- 膿のような分泌物の排出
- 肛門周囲の皮膚が破れている
- 強い痛みで触らせない
- 発熱や食欲不振を伴う
- 便に血液が混じっている
早期受診を検討すべき症状
- 1日に何度も執拗に舐め続ける
- 床におしりをこすりつける行動が頻繁
- 肛門周囲の腫れや赤みが続く
- 便の状態が継続的に悪い
- 寄生虫の断片が便に見える
受診前の観察ポイント
動物病院を受診する前に、以下の点を観察して獣医師に報告できるよう準備しておきましょう。
- 症状の持続期間
- 舐める頻度とタイミング
- 肛門周囲の外観の変化
- 便の状態や色、臭い
- 食欲や元気の変化
- その他の行動の変化
自宅でできる応急処置
受診までの間に自宅でできることは限られていますが、以下の点に注意してください。
- 肛門周囲を清潔に保つ
- 過度に舐めるのを防ぐ(エリザベスカラーの使用)
- 刺激の強い薬剤の使用は避ける
- 無理に肛門腺を絞らない
定期的なケアの重要性
異常が起きてから対処するよりも、日頃からの予防ケアが重要です。
- 定期的な肛門腺のケア(月1回程度)
- 肛門周囲の清拭と観察
- 定期的な健康診断
- 適切な食事管理による便の状態改善
犬のおしりを舐める行動は、軽微なものから重篤な疾患まで様々な原因が考えられます。愛犬の普段の行動をよく観察し、異常を感じたら早めに専門家に相談することで、重篤化を防ぎ、愛犬の健康と快適な生活を維持することができます。