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毛包と犬の健康管理における皮膚疾患の基礎知識

毛包と犬の皮膚病理学

犬の毛包疾患の基本情報
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毛包の構造と役割

毛包は毛根を包む組織で、皮脂腺と密接な関係があります

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炎症の発生メカニズム

細菌感染や免疫力低下により毛包に炎症が起こります

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早期発見の重要性

症状の進行を防ぐために適切な観察が必要です


犬の毛包は毛根を取り囲む重要な皮膚構造で、健康な被毛の成長に不可欠な組織です 。毛包内では毛母細胞が活発に分裂して毛を生成し、同時に皮脂腺から分泌される皮脂によって毛と皮膚の保護が行われています 。毛包は単なる毛の根元ではなく、皮膚の免疫系とも深く関わる複雑な構造体として機能しています 。

参考)表在性細菌性毛包炎について🐶🐱

毛包に炎症が起こる主要な原因は、黄色ブドウ球菌やアクネ菌などの常在菌の異常増殖です 。通常これらの細菌は皮膚表面に存在していても問題を起こしませんが、皮膚バリア機能の低下や免疫力の低下により病原性を示すようになります 。特に犬では、アレルギー反応やストレス、不適切なグルーミングなどが引き金となって毛包炎が発症することが知られています 。

参考)毛包虫症|ペット保険のFPC

毛包炎の進行は段階的に起こり、初期段階では軽度の赤みや小さな膿疱の形成が見られます 。この時点での適切な治療により、多くの場合は完全に治癒し、毛の再生も正常に行われます 。しかし、治療が遅れると炎症が毛包の深部まで進行し、毛母細胞にダメージを与えて永続的な脱毛を引き起こす可能性があります 。

参考)犬の毛包炎とは?愛犬が毛包炎になったときにできるケアを紹介

毛包炎の臨床症状と診断方法

犬の毛包炎における最も特徴的な症状は、毛包周囲の赤みと小さな膿疱の形成です 。これらの膿疱は破れてかさぶたを形成し、患部の毛が抜け落ちることがあります 。犬は患部に強いかゆみを感じるため、頻繁に掻いたり舐めたりする行動を示し、これによって症状がさらに悪化することが多く見られます 。
診断には複数のアプローチが用いられ、まず獣医師による視診と触診が行われます 。皮膚スクレーピング検査により顕微鏡下で細菌やその他の病原体の確認が可能で、細菌培養検査では具体的な細菌種の特定と抗生物質感受性の評価が行われます 。アレルギーが疑われる場合には、アレルギー検査によってアレルゲンの特定も重要な診断手順となります 。
症状の重篤度は炎症の深度と範囲によって決まり、表在性毛包炎では皮膚表面近くの症状に留まりますが、深在性になると毛包全体が破壊され、瘢痕性脱毛症に進行するリスクが高まります 。特に慢性化した毛包炎では、炎症が毛球部まで達して毛母細胞が不可逆的なダメージを受ける可能性があります 。

参考)毛嚢炎と抜け毛の関係|皮膚科での治療方法

毛包虫症とデモデックス感染の特徴

毛包虫症は、デモデックス属の寄生虫が毛包内に寄生することで発症する皮膚疾患です 。犬では主にDemodex canisとDemodex injaiの2種類が確認されており、前者は毛包に、後者は皮脂腺およびその導管に寄生します 。この寄生虫は正常な犬の皮膚にも少数存在しますが、免疫力が低下した状態で異常増殖して病気を引き起こします 。

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若齢犬における毛包虫症は、生後まもなく母犬から感染することが多く、18ヶ月未満の犬での発症が頻繁に報告されています 。シーズーやフレンチブルドッグなどの短頭犬種、テリア系の犬種で特に好発することが知られており 、局所的な脱毛が最初の症状として現れることが典型的です 。特に目の周りや口元、前肢などの部位に脱毛が集中して現れます 。
成犬や老犬での毛包虫症発症は、基礎疾患の存在を強く示唆します 。ステロイド薬や免疫抑制剤の長期使用、糖尿病やクッシング症候群などの内分泌疾患、悪性腫瘍などが背景にある場合が多く 、これらの基礎疾患の治療と並行した管理が必要となります 。診断には皮膚スクレーピング検査が最も重要で、顕微鏡下でデモデックス虫体の確認が行われます 。

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毛包炎の治療法と薬剤選択

毛包炎の治療は、原因菌の種類と症状の重篤度に応じて選択されます 。軽度の表在性毛包炎では、抗菌成分を含むシャンプーによる外用療法が第一選択となることが多く 、クロルヘキシジンやベンゾイルペルオキサイドなどの成分が効果的です 。これらのシャンプーは週2-3回の使用で、皮膚の清潔を保ちながら細菌の繁殖を抑制します 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11610154/

重度の毛包炎や広範囲に及ぶ症例では、全身性の抗生物質療法が必要になります 。オルビフロキサシンやリファンピシンなどのフルオロキノロン系やリファマイシン系抗生物質が選択されることが多く 、治療期間は表在性感染で21-40日、深在性感染では25-150日間に及ぶことがあります 。治療効果は95.6%と高い成功率を示していますが、18%の症例で再発が報告されています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1571130/

毛包虫症の治療には、近年イソキサゾリン系製剤が標準治療となっています 。フルララネル(ブラベクト®)、アフォキソラネル(ネクスガード®)、ロチラネル(クレデリオ®)、サロラネル(シンパリカ®)などが使用され 、最低2ヶ月間の継続治療が推奨されています 。従来使用されていたアミトラズやミルベマイシンオキシムと比較して、副作用が少なく治療効果も高いことが報告されています 。

毛包疾患の予防と日常管理

毛包炎の予防には、適切な皮膚ケアと環境管理が不可欠です 。過度なシャンプーは皮膚の自然な油分を除去してバリア機能を低下させるため、月1-2回程度の適度な頻度での洗浄が推奨されます 。使用するシャンプーは犬の皮膚pHに合わせた製品を選択し、刺激の強い人用製品の使用は避けるべきです 。

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栄養管理も毛包の健康維持に重要で、必須脂肪酸やビタミンE、亜鉛などの栄養素が皮膚バリア機能の維持に寄与します 。食物アレルギーが疑われる場合には、獣医師の指導のもとでアレルゲン除去食の導入を検討し 、アレルギー反応による二次的な毛包炎の予防を図ります 。

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環境要因の管理では、適度な湿度の維持とストレス軽減が重要です 。高湿度環境は細菌の繁殖を促進するため、適切な換気と除湿を心がけ 、定期的なブラッシングにより死毛の除去と皮膚の血行促進を図ります 。また、免疫力維持のための適度な運動と規則正しい生活リズムの確保も、毛包疾患の予防に効果的です 。
毛包虫症の予防では、母犬からの感染を防ぐことは困難ですが、子犬の免疫力向上が重要です 。適切な栄養管理、予防接種の実施、内部寄生虫の駆除などにより子犬の免疫系を強化し 、毛包虫の異常増殖を防ぐことが可能です 。成犬では基礎疾患の早期発見と管理が毛包虫症の発症予防に直結するため、定期的な健康チェックが推奨されます 。