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抗生物質と犬の健康管理について

抗生物質と犬の健康管理

犬の抗生物質治療の基本
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細菌感染症の治療

皮膚炎、膀胱炎、呼吸器感染症などの細菌感染症に対して使用

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適正使用の重要性

獣医師の指示に従い、用法・用量を守って完治まで継続

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副作用と注意点

消化器症状や薬剤耐性菌の発生防止について理解が必要

抗生物質治療が必要な犬の細菌感染症

犬における抗生物質治療の適応となる主要な細菌感染症について説明します。最も頻繁に処方されるケースは細菌性皮膚感染症で、ブドウ球菌による膿皮症が代表的な疾患です 。また、細菌性尿路感染症膀胱炎)も一般的な適応疾患で、大腸菌などの病原菌が尿路に感染することで発症します 。

参考)動物用ウェルメイト錠

呼吸器感染症では、細菌性の気管支炎や肺炎、上部気道感染症の治療にも抗生物質が使用されます 。傷口感染や歯周病による細菌感染も治療対象となり、口腔内の嫌気性菌に対する治療が必要となる場合があります 。これらの感染症は適切な抗生物質治療により、症状の進行を防ぎ、犬の健康を迅速に回復させることが可能です 。

参考)犬や猫の抗生物質について|正しい理解と注意点 – 稲川動物病…

下痢症状において細菌感染が疑われる場合にも抗生物質が処方されることがあり、整腸剤との併用により腸内環境の改善を図ります 。

参考)犬の「下痢」でよく処方される薬【獣医師解説】~動物病院で処方…

抗生物質の種類と犬への効果

犬に使用される抗生物質は、作用機序と抗菌スペクトルによっていくつかの系統に分類されます。β-ラクタム系は最も使用頻度が高く、犬では65%、猫では67%の処方率を占めています 。この系統にはセファレキシン(33%)とアモキシシリン-クラブラン酸(16%)が含まれ、グラム陽性菌に対する優れた抗菌活性を示します 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3280785/

フルオロキノロン系は広範囲の抗菌スペクトルと強い抗菌力を示し、オフロキサシン製剤(ウェルメイト錠)は1日1回投与で優れた臨床効果を発揮します 。犬の処方では7%、猫では12%の使用率となっており 、高い血中濃度と優れた組織移行性が特徴です 。
テトラサイクリン系(ドキシサイクリン・ミノサイクリン)は、グラム陽性菌・陰性菌・嫌気性菌など幅広い病原体に有効で、リケッチアやマイコプラズマ、バベシアなどの原虫感染にも効果が報告されています 。リンコサミド系(クリンダマイシン)は皮膚感染症や歯の感染症に有効で、食事の影響を受けないため安定した効果が期待できます 。

参考)【感受性検査】で間違いない選択を!愛犬・愛猫の細菌感染を正し…

犬に抗生物質を使用する際の注意点と副作用

犬への抗生物質投与で最も多く報告される副作用は消化器系の反応で、吐き気・嘔吐、下痢・軟便、食欲不振、よだれの増加などの症状が現れます 。これらは抗生物質により腸内の善玉菌のバランスが崩れることで生じることが多く、ほとんどは軽度ですが、症状が長引いたり重症化した場合は動物病院への相談が必要です 。

参考)犬の抗生物質による副作用と安全な対処法|犬 抗生物質 副作用…

重篤な副作用として、顔の腫れやじんましん、呼吸困難、重度の元気消失、けいれん・震え、不整脈などのアレルギー反応やアナフィラキシーが報告されており、これらの症状が現れた場合は緊急の対応が必要です 。MDR1遺伝子変異を持つ一部の犬種(コリー、シェルティなど)では副作用に対して特に敏感であることが知られています 。
フルオロキノロン系は軟骨形成に影響を与える可能性があり、特に大型犬種の若齢犬では慎重な使用が必要です 。アミノグリコシド系は腎臓への毒性があるため、腎機能が低下している犬には注意深い投与が求められます 。投与後に異常が見られる場合は迷わず動物病院に連絡し、飼い主の自己判断による投薬中止は避けることが重要です 。

参考)【獣医師監修】犬に抗生物質を用いるときに注意すること。服用す…

抗生物質の適正使用と薬剤耐性菌対策

抗生物質の慎重使用とは、細菌感染症の存在が明らかである、または強く疑われる証拠があり、抗生物質を使用しなければ症状の改善が見込めない場合にのみ、適切な薬剤を適切な投与方法で使用することです 。この原則には、必要でない場合には投与しないという判断も含まれています 。

参考)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/attach/pdf/240328_7-8.pdf

薬剤耐性菌とは抗菌薬に対する抵抗性を示す細菌のことで、抗菌薬使用により感受性菌は死滅するものの、耐性菌は生存し増殖します 。不適切な使用による耐性菌の増加は世界的な問題となっており、難治性感染症や致死性感染症の原因となります 。犬の臨床においても、多剤耐性を有するStaphylococcus pseudointermedius(MRSP)などの耐性菌が問題となっています 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7712406/

適正使用には薬剤感受性試験の実施が重要で、原因菌を特定した上で有効な抗菌剤を選択することが求められます 。フルオロキノロンなどの第二次選択薬は、第一次選択薬が無効の場合にのみ使用し、未承認薬の使用や適応外使用は原則として避けるべきです 。投与後の効果判定を実施し、必要に応じて抗菌剤を変更することも適正使用の一環です 。

参考)https://jvma-vet.jp/mag/06910/a2.pdf

抗生物質治療中における犬の健康管理で注意すべき特殊な状況

抗生物質治療中の犬において、紫外線による皮膚トラブルは特別な注意が必要な問題です。一部の抗生物質は光毒性を示すことがあり、強い紫外線に曝露された際に皮膚炎を引き起こす可能性があります 。特に日光性皮膚炎(コーリーノーズ)は、鼻の上部に炎症が起きやすく、コリー、シェットランド・シープドッグなどの犬種に多く見られます 。

参考)日差しが強い時期は要注意!犬の皮膚病対策とケア方法 – 日本…

この病態では抗炎症剤や抗生剤の投与が行われますが 、慢性化すると扁平上皮癌への移行リスクがあるため、早期の処置と継続的な紫外線対策が重要です 。治療中は10時~16時頃の紫外線が強い時間帯の散歩を控え、犬用の日焼け止めやUV加工の服を活用することが推奨されます 。

参考)犬・猫にも紫外線対策が必要?自宅で行う予防と紫外線のリスクと…

抗生物質治療による元気消失や疲れやすさも重要な観察ポイントです。消化器症状による脱水や栄養吸収の低下により、犬がだるくなったり元気がなくなることがあります 。このような症状は投薬開始後数日以内に現れることが多く、食欲不振や流涎を伴う場合があります 。症状が持続する場合は、薬剤の変更や補液療法の検討が必要となることがあります 。

参考)【獣医師監修】犬や猫の抗生剤に対する副作用について解説

農林水産省による愛玩動物における抗菌薬の慎重使用ガイドライン

薬剤耐性菌対策と適正使用に関する公的な指針が詳しく記載されています。

動物医薬品検査所による動物用抗菌薬一覧(犬・猫用)

承認された動物用抗菌薬の最新情報と使用基準について確認できます。