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後天性心疾患と犬の健康管理について

後天性心疾患と犬の健康管理について

犬の後天性心疾患の基本情報
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主要な疾患の種類

僧帽弁閉鎖不全症と拡張型心筋症が代表的

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好発犬種とリスク

小型犬から大型犬まで年齢による発症リスク

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最新治療法の展望

内科治療から外科治療まで選択肢が拡大

後天性心疾患の基本的な種類と特徴

犬の後天性心疾患は、生まれた後に発症する心臓の病気で、主に加齢が原因となります 。代表的な疾患には僧帽弁閉鎖不全症拡張型心筋症があり、どちらも犬の健康に重大な影響を与えます 。
僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心疾患の中で最も発症率が高い病気です 。左心房と左心室を仕切る僧帽弁が加齢により変性し、しっかりと閉じなくなることで血液の逆流が起こります 。特にキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルマルチーズ、チワワなどの中高齢の小型犬に多く見られます 。
一方、拡張型心筋症は心筋が薄くなって心臓のポンプ機能が低下する疾患で、犬の後天性心疾患では僧帽弁閉鎖不全症に次いで多いとされています 。ドーベルマン、グレートデーンなどの3~10歳の中高齢大型犬に多く発症する特徴があります 。

参考)犬の心疾患の症状と原因、治療法について

  • 僧帽弁閉鎖不全症: 小型犬の高齢犬に多発
  • 拡張型心筋症: 大型犬の中高齢期に好発
  • 三尖弁閉鎖不全症: 弁膜症の一種として併発することが多い

後天性心疾患の初期症状と進行パターン

後天性心疾患の多くは、初期段階では目立った症状が現れないことが特徴的です 。しかし、病気が進行するにつれて様々な症状が現れ始めます。
初期症状として最も重要なのは、獣医師による聴診で発見される心雑音です 。心雑音は聴診器を使用すれば初期段階から検出可能で、心疾患の早期発見に欠かせない所見となります 。

病気が進行すると以下のような症状が現れます。

特に拡張型心筋症では、突然失神を起こしたり、運動したがらなくなる症状が特徴的で、不整脈による突然死のリスクも高くなります 。

後天性心疾患の診断方法と検査技術

犬の後天性心疾患の診断には、複数の検査方法を組み合わせた総合的なアプローチが必要です 。
基本検査では、聴診を含む一般身体検査が最も重要な役割を果たします 。ほとんどの心疾患でこの段階で病気の存在を判断でき、心雑音の有無により心疾患の可能性を評価できます 。
画像診断として、レントゲン検査では心臓の大きさと形を評価し、心拡大の有無を確認します 。心エコー検査(超音波検査)では、心臓内部の詳細な観察が可能で、僧帽弁の状態や心機能を精密に評価できます 。
血液検査では、フィラリア感染の有無や腎機能、代謝性疾患の確認を行います 。特に高齢犬では一般的な血液検査が推奨されています 。

  • ドップラー検査: 血流速度の測定により逆流の程度を評価
  • ホルター心電図: 24時間の心電図記録で不整脈を検出

    参考)ペースメーカー治療

  • NT-proBNP: 心不全の早期診断マーカーとして活用

後天性心疾患の内科的治療アプローチ

犬の後天性心疾患の治療は、主に内科的治療が中心となり、病気の進行段階に応じて薬物療法が選択されます 。

参考)森田動物医療センター|犬の弁膜症について

標準的な内科治療では、アメリカ獣医内科学学会のガイドラインに基づいた治療指針が広く採用されています 。心臓に明らかな拡大が認められる場合に投薬治療の適応となり、基本的に生涯継続での内服が必要です 。

参考)https://and-vet-ah.com/case/mmvd/

ピモベンダンは心筋収縮力を高める強心薬として、僧帽弁閉鎖不全症の治療に広く使用されています。2025年には日本初の経口液剤「ベトメディン®経口液」が発売され、投薬の利便性が向上しました 。

参考)https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-25-0303

新しい治療選択肢として、ARNI(サクビトリル/バルサルタン)配合薬「エンレスト」が注目されています 。この薬は心臓の負担を軽減する作用と心保護ホルモンの働きを保つ二重の効果を持ち、重度の症状がある犬に対して症状コントロールの新たな選択肢となっています 。

参考)心臓病で咳が続くワンちゃんに、新しい治療の選択肢 ─ ARN…

臨床試験では、stage Cの僧帽弁閉鎖不全症犬において心臓の大きさが有意に縮小する効果が確認されており、既存治療で改善が見られない場合の有効な選択肢として期待されています 。

参考)小型犬の心臓病 僧帽弁閉鎖不全症の最新内科治療2025 -千…

後天性心疾患の最新外科治療と特殊療法

犬の後天性心疾患に対する外科的治療は、近年大きく進歩を遂げており、内科治療では改善困難な症例に対する新たな希望となっています 。
僧帽弁修復手術は変形した弁の形状を修復し、血液の逆流を改善する根本的治療法です 。手術により病気そのものの改善を目指すことができ、人工心肺装置を用いた開心術も専門施設で実施されています 。ただし、症状の進行度や合併症により適応が限られ、専門病院への紹介が必要となります 。
ペースメーカー植込み術は、徐脈性不整脈による失神やふらつきに対する革新的治療法です 。手術方法には経静脈的リード設置と心外膜リード設置の2つがあり、中〜大型犬では前者、小型犬や猫では後者が選択されることが多くなります 。

参考)ペースメーカ植込み術

手術は全身麻酔下で約2時間かけて実施され、心臓表面に電極を直接固定し、ペースメーカー本体を腹部に植込みます 。術後は3〜7日間の入院管理が必要で、定期的な機能チェックによる長期管理が重要です 。
再生医療の分野でも進歩が見られ、自己の幹細胞を利用した治療法の研究が進んでいます 。これらの最新技術は、従来の治療法では限界のあった症例に対する新たな可能性を提供しています。

参考)https://tokyowest-ah.jp/blog/2025/05/15/%E3%80%90%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%8C%E3%81%AF%E3%81%98%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%91-%E5%A4%A7%E5%88%87%E3%81%AA%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%88%E7%8A%AC%E3%80%81/

  • 外科治療の合併症: リード損傷、感染、血栓症、機能不全等のリスク管理
  • 術後管理: 抗生剤による感染予防と定期的な機能評価が必須