尿石犬の症状と治療
尿石犬に見られる初期症状
犬の尿石症では、初期段階から特徴的な症状が現れることが多く、早期発見が重要です。最も一般的な症状として、頻尿が挙げられ、通常よりも排尿回数が増加し、一回の排尿量が少なくなります 。また、血尿も典型的な症状で、尿に血液が混じることで赤みを帯びた色調になることがあります 。
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排尿時に痛みを伴う場合、犬が排尿時に鳴き声を上げたり、排尿姿勢を長時間維持したりすることがあります 。さらに、尿失禁や尿漏れも観察され、普段トイレでしか排尿しない犬がトイレ以外の場所で粗相をするようになることもあります 。
尿路感染症を併発している場合は、尿から強い臭いが発生し、尿が濁って見えることもあります 。これらの症状が複数組み合わさって現れることが多く、愛犬の排尿パターンの変化を注意深く観察することが重要です。
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尿石の種類とそれぞれの特徴
犬の尿石症では主にストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が全体の8~9割を占めており、それぞれ異なる特徴を持っています 。ストルバイト結石は尿のpHがアルカリ性に傾くと形成されやすく、特にメス犬ではウレアーゼ産生細菌による感染が大きく関与しています 。
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シュウ酸カルシウム結石は対照的に、尿のpHが酸性に傾くと発生しやすく、感染の有無に関係なく形成される特徴があります 。ストルバイト結石の場合、細菌感染に伴って生じることが多く、犬の尿路結石の大部分を占めています 。
発症年齢にも違いがあり、若齢ではストルバイト結石症、高齢ではシュウ酸カルシウム結石症が多くなる傾向があります 。また、性別による発症傾向も異なり、ストルバイト結石はメス犬で多く、シュウ酸カルシウム結石はオス犬で多く見られます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2777289/
尿石犬の診断方法と検査手順
尿石症の診断には複数の検査方法が用いられ、正確な診断のために段階的なアプローチが重要です。尿検査では尿のpHや結晶の形状を確認し、結石の種類を推定することができます 。また、尿中の細菌培養検査により、感染の有無と原因菌を特定します 。
画像診断では腹部超音波検査により結石の存在、大きさ、数を確認できます 。腹部X線検査も重要な診断手段で、レントゲンで確認できる結石の種類や位置を把握することができます 。
血液検査では腎機能の評価や全身状態の把握を行い、特に尿管閉塞などの合併症がある場合は腎機能障害の程度を評価します 。診断の過程では、膀胱炎や腫瘍などの他の原因による症状と区別することも重要であり、獣医師による総合的な判断が必要になります 。
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尿石の食事療法と内科的治療
食事療法は尿石症治療の基本的なアプローチで、結石の種類に応じた専用療法食の使用が推奨されています 。ストルバイト結石の場合、尿のpHを弱酸性に維持し、リンやマグネシウムを制限した療法食により溶解が期待できます 。
療法食以外の食事やおやつは与えないことが重要で、療法食の効果を最大化するために厳格な食事管理が必要です 。水分摂取量の増加も治療の重要な要素で、体重1kgあたり40~60mlの水分摂取を目標とします 。
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ウェットフードやふやかしたドライフードを活用し、自然な水分補給を促進する工夫も有効です 。細菌感染を伴う場合は、抗生物質による治療も併用され、感染制御と結石溶解を同時に進めます 。治療期間中は定期的な尿検査により治療効果を確認し、必要に応じて治療法の調整を行います。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6676539/
尿石の外科的治療と合併症対策
シュウ酸カルシウム結石など内科的に溶解できない結石や、大きな結石の場合は外科的摘出が必要になります 。最も一般的な手術法は膀胱切開術で、膀胱を直接切開して結石を摘出します 。
参考)https://ijvsbt.org/index.php/journal/article/view/150/72
近年では腹腔鏡手術や尿路洗浄などの低侵襲治療も選択肢として利用されており、従来の開腹手術と比較して術後の回復が早いとされています 。尿管結石の場合は、尿管ステントや尿管バイパスなどの高度な技術が必要で、専門的な施設での治療が推奨されます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11586565/
術後の合併症として尿漏れが1~2週間程度続くことがありますが、多くの場合は一時的なものです 。尿道閉塞や尿管閉塞などの緊急事態では、急性腎障害や尿毒症を防ぐため迅速な外科的介入が必要になります 。手術後は結石の成分分析を行い、再発予防のための食事管理を継続します 。