ラブラドールレトリバーがかかりやすい病気
ラブラドールレトリバーは日本でもっとも飼育頭数が多い大型犬として知られています。その人気の理由は賢くてしつけしやすい性格にありますが、同時に特定の病気にかかりやすい傾向があることも事実です。実際の動物病院受診データによると、ラブラドールレトリバーには明確な疾患パターンが見られ、飼い主として事前に知っておくべき重要な健康情報があります。
ラブラドールレトリバーの皮膚の病気とアトピー性皮膚炎
ラブラドールレトリバーの病気で最も多いのが皮膚の病気で、約3分の1が皮膚関連の疾患で動物病院を受診しています。特に注意すべきは以下の3つの皮膚疾患です。
- チョコレート色のラブラドールレトリバーは他の毛色より約2倍発症しやすい
- ハウスダストや花粉、ダニなどの環境物質に対するアレルギー反応
- 口や眼、耳や腰などにかゆみ・赤みを引き起こす
- 3歳までに発症することが多い
膿皮症(のうひしょう)
- 高温多湿の時期に発症しやすい
- 赤い発疹と強いかゆみが特徴
- 細菌感染が原因で起こる皮膚の化膿性疾患
マラセチア性皮膚炎(脂漏性皮膚炎)
- 皮膚のべたつきが特徴的な症状
- マラセチア酵母菌の異常増殖が原因
- 慢性化しやすく再発率も高い
アトピー性皮膚炎の予防は完全にはできませんが、遺伝的要因でラブラドールレトリバーは発症しやすい傾向があります。発症した場合は、かゆみを抑えて悪化を防ぐことが重要で、投薬治療とシャンプーによるコンディション強化が効果的です。
ラブラドールレトリバーの外耳炎と耳の病気
ラブラドールレトリバーは垂れ耳の構造上、耳のトラブルが発生しやすい犬種です。垂れ耳により湿気がこもりやすく、細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまいます。
外耳炎の症状と特徴
- 耳のかゆみや赤み
- 耳垢の増加と臭いの発生
- 頻繁に耳をかいたり地面に耳をこすりつける行動
- 首を振る仕草の増加
耳血腫
- 耳たぶが膨らむ症状
- 頭を振るなど耳たぶへの刺激で発症
- 外耳炎の二次的な合併症として起こることが多い
外耳炎の予防には定期的な耳の清潔管理が不可欠です。コットンで定期的に拭き取ることで、異変の早期発見にもつながります。治療が遅れると慢性化するリスクや他の病気を助長する可能性もあるため、早期の対応が重要です。
ラブラドールレトリバーの胃捻転と消化器系の病気
胃捻転はラブラドールレトリバーなど大型犬に特に多い緊急疾患で、命の危険もある深刻な病気です。食餌後に急激に胃が膨張し捻じれてしまう現象で、捻じれることによって神経や血流に重大な影響を及ぼします。
胃捻転の症状
- お腹の明らかな膨らみ
- 呼吸困難
- よだれの増加
- 吐こうとするが吐けない状態
- ショック状態(重篤な場合)
胃捻転の予防策
- 食後すぐの激しい運動を避ける
- 一度に大量の食事を与えない
- 食事の回数を分けて与える
- 早食いを防ぐ工夫をする
胃捻転は発症から数時間で生命に関わる状態になることがあるため、上記の症状が見られた場合は緊急に動物病院を受診する必要があります。
尿石症
ラブラドールレトリバーの場合は遺伝性のものが多く、結石によって膀胱炎や尿道閉塞が起こります。若齢で発症することが多く、排尿の量が少ない場合や頻尿、変な格好をしながら排尿するなどの兆候が現れたら注意が必要です。
ラブラドールレトリバーの股関節形成不全と筋骨格系の病気
股関節形成不全は、ラブラドールレトリバーが遺伝的に発症しやすい筋骨格系の代表的な疾患です。股関節の発育や発達に異常があり、歩行にも支障が現れる病気で、ほとんどは両足に発症します。
股関節形成不全の特徴的な症状
- 横座りの姿勢を好む
- モンローウォークと呼ばれる腰を振ったような歩き方
- バニーホップ(スキップやうさぎ跳びのような歩き方)
- 運動を嫌がる
- 階段の昇降を嫌がる
原因と予防
股関節形成不全は骨格や筋肉など遺伝的な要因が大きく、食事や体重、運動などが影響する場合もあります。ラブラドールレトリバーは遺伝的に発症しやすい犬種のため、股関節にストレスがかからないよう適切な体重維持を心がけることが重要です。
前十字靭帯断裂
大腿骨と脛骨をつなぐ前十字靭帯が切れてしまう病気で、発症すると後ろ足を上げて歩くなどの症状が現れます。大型犬特有の疾患として知られています。
ラブラドールレトリバーの癌・悪性腫瘍の予防と早期発見
ラブラドールレトリバーは癌(悪性腫瘍)の発症率が全犬種の平均より高い犬種として知られています。0〜8歳のラブラドールレトリバーのうち7.5%が腫瘍疾患を発症しており、全犬種の中で3番目に発症しやすい犬種です。犬全体の腫瘍疾患の発症率は平均4.9%なので、約1.5倍も発症しやすいことになります。
主要な癌の種類
悪性リンパ腫
- 白血球の一種であるリンパ球が癌化する血液癌
- 6歳以上の高齢犬に発症が多い
- 多中心型リンパ腫が最も一般的
- 顎、脇の下、内股、膝の裏側などの体表リンパ節が腫れる
- 免疫細胞の一種である肥満細胞の癌
- しこり、患部の脱毛などの症状
- 皮膚がピンク色になる場合もある
骨肉腫
- 大型犬や超大型犬が発症しやすい骨の癌
- 長い骨、特に4本の足に多く見られる
- 前足では肘から遠い部分、後ろ足では膝に近い部分に発症しやすい
- 肺への転移が多く見られる
- 血管の内側にある細胞の癌
- 進行がとても早く、転移率も高い
- 血管の多い脾臓や心臓、肝臓などの臓器で発生しやすい
早期発見のポイント
- 定期的な健康診断の実施
- 日常的な触診でしこりの有無をチェック
- 食欲不振や元気の低下などの全身症状の観察
- リンパ節の腫れの確認
その他の重要な疾患
高齢の大型犬に多く見られる内分泌系の病気で、甲状腺ホルモンの分泌が低下します。元気がない、徐脈、肥満、脱毛、嗜眠、低体温、皮膚への色素沈着、顔つきがぼんやりするなどの症状が現れます。
血糖値を調節するインスリンの働きが不十分で、高血糖状態が続く病気です。高齢になると発症しやすくなり、食欲が増える、水をたくさん飲む、おしっこの量が増えるなどの症状が特徴的です。
ナルコレプシー
突然、膝や腰の筋肉や全身の力が抜けて居眠りするような症状が出る睡眠疾患です。ラブラドールレトリバー特有の遺伝性疾患として知られています。
白内障・緑内障
目の疾患では白内障や緑内障も発症しやすく、定期的な眼科検診が推奨されます。
予防と健康管理の重要性
ラブラドールレトリバーの健康管理において最も重要なのは、定期的な健康診断と日常的な観察です。特に癌の発症率が高いことから、年に1〜2回の健康診断は必須といえるでしょう。
また、適切な体重管理は多くの疾患の予防につながります。股関節形成不全や胃捻転のリスクを減らすためにも、肥満を避け、適度な運動を心がけることが大切です。
皮膚や耳の日常的なケアも重要で、定期的な清拭と観察により、多くの疾患を早期に発見することが可能です。愛犬の健康を守るためには、飼い主の継続的な注意と適切な知識が不可欠です。