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ステロイド剤(犬)種類と一覧|効果と副作用を解説

ステロイド剤種類と一覧

犬用ステロイド剤の基本分類
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内服薬

プレドニゾロンを中心とした飲み薬で全身への効果が高い

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外用薬

皮膚に直接塗布する薬で局所的な治療に適している

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点耳薬

外耳炎治療に特化した薬で耳の炎症を効果的に抑制

ステロイド剤内服薬の種類と特徴

犬の皮膚科領域で使用される内服ステロイド剤は、主にプレドニゾロンが使用されます。病院によっては効能がほぼ同じプレドニゾンを処方する場合もありますが、プレドニゾロンが第一選択薬となっています。
商品名としては以下のようなものがあります。

  • プレドニゾロン錠「(メーカー名)」
  • プレドニン錠
  • 大型犬用の海外薬
  • 錠剤が飲めない犬用の粉薬

プレドニゾロンの投与量は体重1kg当たり0.5-1.0mg/kgで開始することが一般的で、これを抗炎症量と呼びます。興味深いことに、プレドニゾロンはステロイドの強度分類では最も弱い「ウィーク」に分類されますが、これは外用と内服での体への吸収率の違いによるものです。
使用期間は症状によって調整され、軽症の場合は数日から1週間程度、重症・慢性皮膚炎の場合は4週間を基本として、1-2週間毎に症状の改善や副作用の有無を確認しながら徐々に減量していきます。

ステロイド剤外用薬の種類と強度分類

外用ステロイド剤は内服薬と比較して種類が豊富で、その強度によって5段階に分類されています。動物用医薬品では以下のような代表的な製品があります。
合剤タイプ(ステロイド+抗生物質+抗真菌薬

  • ビクタスS MTクリーム
  • ゲルネFローション
  • ヒビクス軟膏

ステロイド単剤タイプ

  • アレリーフローション
  • コルタバンス

ステロイドの強度分類は以下の通りです。

  • ストロンゲスト(最強):動物用では製品なし
  • ベリーストロング(動物用では実質最強)
  • ストロング
  • ミディアム
  • ウィーク(最弱)

アレリーフローションは比較的新しい薬で、頑固な皮膚肥厚や苔癬化などの重度かつ慢性の症状に対しても高い効果を示します。使用期間は基本的に皮膚のターンオーバーを意識して4週間で計画し、症状の程度に応じて調整します。
剤型の使い分けでは、軟膏・ローション・クリームという「固さ」による選択も重要で、症状の出方や皮膚への刺激性、患者動物の性格などを考慮して決定されます。

ステロイド剤点耳薬の種類と使用法

外耳炎治療に使用される点耳薬も多くの種類があり、代表的なステロイド系点耳薬には以下があります。

  • ウェルメイトL3
  • オトマックス
  • モメタオティック
  • イズオティック
  • オスルニア

点耳薬の使用方法は意外に簡単で、小型犬では通常片耳につき1日1回1滴使用します。中・大型犬では耳が大きいため1回2-3滴を使用します。
正しい点耳方法。

  1. 犬の耳と顔を斜めにして耳の穴が上を向くようにする
  2. ボトル先を耳の皮膚に付けないよう注意しながら穴を狙って1滴落とす
  3. 耳の根本の軟骨を数秒優しく揉んで薬を馴染ませる

点耳薬は皮膚の塗り薬として転用されることも多く、特にアレルギー性皮膚炎で外耳炎を併発している犬では、点耳薬をそのまま皮膚に塗布することもあります。ただし、これは効能外使用となるため、獣医師の判断が必要です。

ステロイド剤の副作用と注意事項

ステロイド剤の副作用は使用方法や期間によって大きく異なり、短期間・低用量での使用では副作用のリスクは低いとされています。しかし、長期使用(3週間から1ヶ月以上)では注意深い管理が必要です。
内服薬の主な副作用

外用薬・点耳薬の副作用

  • ステロイド皮膚症(過剰使用により皮膚が萎縮し赤みや痒みを起こす)
  • 皮膚の薄化
  • 毛の脱落
  • 感染症への抵抗力低下

特に注意すべきは、ステロイド皮膚症です。これは赤くて痒いからとステロイドを継続塗布することで悪化する負の連鎖を引き起こします。また、ステロイドを1か月使用した場合、約70%の症例で副腎予備能の低下が見られたという報告もあります。
最も危険な副作用は免疫機能の低下による感染症の悪化や新たな感染症の発症であり、基礎疾患として細菌感染、糖尿病、全身性真菌感染症がある場合は特に注意が必要です。

ステロイド剤の適切な選び方と代替療法の重要性

現代の獣医皮膚科では、ステロイド以外の治療選択肢も豊富になっており、代替できる薬を積極的に活用することでステロイドの使用を最小限に抑える取り組みが行われています。
ステロイド代替薬の例

ステロイド選択の基本原則は「最小限の量・最短の期間」での使用です。人医療のアレルギー疾患治療ガイドラインでは、ステロイド剤の経口投与は「最重症の時のみ服薬する」ことが推奨されており、外用薬であれば内服薬よりも体の他の臓器への影響を最小限にできます。
動物の場合、体毛が密生していることや塗り薬を嫌がる個体がいることから、人とは異なる治療戦略が必要になります。そのため、個々の犬の性格や症状、飼い主の管理能力を総合的に判断して最適な治療法を選択することが重要です。
獣医師による定期的な診察と血液検査での健康状態確認、そして飼い主による注意深い観察が、ステロイド治療の成功には欠かせません。特に薬を急にやめることは避け、必ず獣医師の指示に従って徐々に減らしていくことが大切です。
日本獣医皮膚科学会による治療ガイドライン
https://www.jvd.jp/
動物用医薬品の適正使用に関する情報
https://www.famic.go.jp/ffis/feed/tuti/21_tyuui_iyaku.html