バベシア症犬原虫感染マダニ媒介
犬のバベシア症は、バベシア原虫という病原体がマダニを介して犬に感染することで発症する感染症です。この原虫は犬の赤血球に寄生し、免疫反応によって赤血球が破壊されるため、重篤な貧血を引き起こします。
日本では主に西日本で発生が確認されていましたが、近年では東日本でも症例が報告されており、発生エリアが拡大している傾向にあります。犬に感染するバベシア原虫は「バベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)」と「バベシア・カニス(Babesia canis)」の2種類が知られています。
マダニは公園の草むらや野山、畑などに生息しており、春から秋にかけて活動が活発になります。すべてのマダニがバベシア原虫を保有しているわけではありませんが、感染したマダニが犬の血液を吸血する際に原虫が体内に侵入します。
バベシア症犬症状早期発見ポイント
バベシア症の症状は多岐にわたり、初期段階では見落としやすいことが特徴です。最も頻繁に見られる症状はビリルビン尿(92%)と貧血(87%)で、血液検査では血小板減少(98%)がほぼ全例で確認されています。
主な症状は以下の通りです。
- 発熱 – 原虫感染による炎症反応
- 元気消失・食欲不振 – 散歩を嫌がり動きたがらない
- 貧血症状 – 歯茎や舌、眼球結膜が白っぽくなる
- 血色素尿 – 尿が茶色や赤っぽい色に変化
- 黄疸 – 歯茎や白目部分が黄色くなる
- 体重減少・疲労感 – ふらつきや息切れ
特に注目すべきは尿色の変化で、これは再発時にも体調不良の前兆として現れることが多いため、飼い主が最も気づきやすい症状の一つです。
バベシア症犬診断検査方法
バベシア症の診断には複数の検査方法が組み合わせて用いられます。最も基本的な検査は顕微鏡検査で、血液塗抹標本を作成してバベシア原虫を直接観察します。
血液検査所見として重要な指標。
- 血小板減少 – 98%の症例で確認される最も頻繁な所見
- 貧血 – ヘモグロビン値やヘマトクリット値の低下
- 肝酵素の上昇 – ALTやASTの数値異常
- 高タンパク血症 – 炎症反応による血液成分の変化
- 尿検査異常 – タンパク尿やビリルビン尿の検出
近年ではPCR検査や抗体検査も実施されており、より正確な診断が可能になっています。健康診断で血小板減少が発見された場合、出血傾向がなくてもマダニ咬傷歴を確認することが重要です。
バベシア症犬治療薬副作用対策
バベシア症の治療は抗原虫薬を中心とした薬物療法が行われます。治療で使用される主な薬剤と特徴は以下の通りです:
ジミナゼン
- バベシア原虫の増殖を抑制する主要薬剤
- 注射による投与が一般的
- 副作用:注射部位の痛み、腎障害、肝障害のリスク
アトバコン(±アジスロマイシン併用)
- 海外では人のマラリア治療薬として使用
- 国内使用には個人輸入が必要
- 問題点:バベシア原虫の早期耐性発現
補助的治療薬
- クリンダマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール
- 抗生物質として検査結果待ちや慢性期に使用
- 免疫力向上のためのサプリメント併用
重症例では輸血治療が必要となる場合もあります。治療においては、完全な原虫排除が困難なため、症状の寛解を目指し、その後長期間の抗生物質投与による再発防止が重要です。
バベシア症犬予防マダニ対策徹底
バベシア症の予防はマダニ対策が最も重要で効果的な方法です。マダニが犬に吸血してからバベシア原虫が感染するまでに2~3日間かかるため、定期的な予防が感染リスクを大幅に減少させます。
効果的な予防対策。
- 動物病院処方の駆除剤使用 – フロントライン等の月1回定期投与
- 散歩後の身体チェック – 特に耳の周り、指の間、腹部の確認
- マダニ発見時の対処 – 手で無理に取らず動物病院で除去
- 草むらや林への立ち入り注意 – マダニ生息地域の回避
市販のノミダニ駆除剤(スプレーやスポットタイプ)は効果が不十分なため、獣医師処方の薬剤を使用することが推奨されます。
意外な感染経路として、輸血や妊娠時の胎児への垂直感染も報告されており、感染犬の血液は輸血用として使用できず、繁殖も避けるべきとされています。
バベシア症犬再発リスク管理継続
バベシア症は治療後も完全な原虫排除が困難なため、再発リスクの管理が生涯にわたって必要です。回復した犬の約半数で1年以上にわたる腎機能低下が報告されており、定期的な検診が不可欠です。
再発リスクが高まる条件。
- 強いストレス – 環境変化や手術などの身体的負担
- 免疫抑制剤の使用 – 他疾患治療による免疫力低下
- 脾臓摘出 – 免疫機能の重要臓器の喪失
- 高齢化や体力低下 – 自然免疫力の減衰
継続的管理のポイント。
- 定期血液検査(3~6ヶ月毎)による早期発見
- 尿色の変化を日常的にチェック
- 元気・食欲の変化に敏感に対応
- ストレス軽減環境の維持
治療成功後も無症状キャリアとなっている可能性があるため、飼い主の継続的な観察と獣医師との密な連携が愛犬の健康維持に欠かせません。
バベシア症は早期発見・早期治療により救命率が大幅に向上する疾患です。マダニ予防の徹底と症状への注意深い観察により、愛犬を守ることができます。
犬バベシア症の詳細な症状と診断について
https://www.fpc-pet.co.jp/dog/disease/134
マダニ予防と治療プロトコールの詳細