PR

血管皮膚炎の症状・原因・治療法を解説

血管皮膚炎とは

血管皮膚炎の基本知識
🩸

血管の炎症性疾患

真皮の小血管に炎症が起こり、血行障害により皮膚症状が現れる疾患です

🐕

犬に多い皮膚病

猫よりも犬でよく見られ、全犬種で発症する可能性があります

⚠️

早期治療が重要

重症化すると皮膚壊死や深い潰瘍を引き起こす可能性があります

血管皮膚炎の定義と概要

血管皮膚炎皮膚血管炎)とは、真皮または皮下組織の血管壁に炎症が起こる皮膚疾患の総称です。何らかの原因により異常な免疫反応が起こり、皮膚の小さな血管に炎症が生じます。この炎症により血管壁が破壊され、血流が阻害されることで、様々な皮膚症状が現れます。

皮膚血管炎は、病理組織学的に血管壁に炎症性変化を示す疾患を指し、猫よりも犬でよく見られる疾患です。血管の種類によって動脈炎と静脈炎に分けられ、それぞれ異なる症状を示します。

血管皮膚炎の症状と特徴的な病変

血管皮膚炎の代表的な症状には以下があります:

  • 脱毛:病変部位の毛が抜け落ちる
  • 紫斑(しはん):紫色の斑点状出血
  • 赤み:皮膚の発赤
  • 潰瘍:えぐれた傷のような深い欠損
  • 細胞の壊死:皮膚組織の死滅
  • 血疱:血液を含んだ水疱
  • 結痂かさぶた様の病変
  • 先端紫藍症:四肢の先端が青紫色になる状態

最も特徴的な症状は、耳介の縁の皮膚が落ちてギザギザとした状態になることです。この際、脱毛や点状の内出血を伴うことが多く見られます。

病変は主に四肢端、耳介、尾端、陰嚢、口腔粘膜に現れますが、体幹に認められることもあります。重度の場合は食欲不振や元気消失などの全身症状も現れることがあります。

血管皮膚炎の原因と発症機序

血管皮膚炎の原因は多岐にわたりますが、最も代表的なのはⅢ型アレルギー(免疫複合体型アレルギー)です。これは抗原と抗体が結合した免疫複合体が血管壁に沈着し、組織障害を引き起こす状態です。

その他の主要な原因には以下があります:

  • 薬物有害反応:ワクチン接種を含む薬物による反応
  • 感染症:細菌、ウイルス、原虫による感染
  • 食物有害反応:特定の食物に対するアレルギー反応
  • 昆虫刺咬症:虫刺されによる反応
  • 内臓悪性腫瘍:がんに伴う血管炎
  • 全身性エリテマトーデス自己免疫疾患

皮膚血管炎の一般的なきっかけとしては、食物アレルギー、悪性腫瘍、薬物の投与、ワクチンの接種などが考えられています。

血管皮膚炎の診断方法と鑑別診断

血管皮膚炎の確定診断には皮膚生検が必要ですが、血管炎の病理組織学的所見を呈する場所を生検によって必ずしも採取できるとは限らないため注意が必要です。

紫斑が認められる場合の鑑別診断には以下があります:

  • 血液凝固障害
  • 全身性エリテマトーデス
  • 寒冷凝集素症
  • 凍傷
  • DIC(播種性血管内凝固症候群)

潰瘍が認められる場合の鑑別診断。

  • 自己免疫性表皮下水疱症
  • 熱傷
  • 深在性膿皮症

診断には血液検査や画像診断も併用し、可能性のある疾患を一つずつ絞り込んでいくことが重要です。特に、グレーハウンドなどでは皮膚および腎臓の両方に血管炎が認められることがあるため、全身的な検査も必要です。

血管皮膚炎の治療法と予後

血管皮膚炎の治療は症状の重症度に応じて選択されます。

軽症例の治療

  • ペントキシフィリン:免疫調整薬として第一選択薬
  • 末梢循環改善薬:血流改善を目的とした薬剤
  • 外用抗炎症剤:軟膏タイプの抗炎症剤

重症例の治療

これらの薬剤は単独または併用で使用されます。血流改善を目的として、褥瘡・皮膚潰瘍治療薬であるブラクデシンナトリウムの軟膏を塗布する場合もあります。

治療開始から2か月以内に治療を中止できる場合もありますが、中止すると臨床症状が再発する場合には長期間の投与が必要となります。皮膚血管炎は一度治っても再発し、繰り返すことがあるため、定期的な診察と継続的な管理が重要です。

実際の治療例では、末梢循環改善薬と軟膏の抗炎症剤を併用した1か月後に顕著な改善が見られ、その後は飲み薬のみで維持できた症例も報告されています。ただし、潰瘍が形成されてしまうと正常な皮膚構造が残らないため、治癒後も毛が生えてこない場合があります。

原因となる疾患がある場合は、その治療も並行して行われます。感染症に対する治療や、原因として疑わしい薬物の投与中止などが実施されます。

免疫抑制剤使用時は、感染が原因となっている可能性を除去し、全身に潰瘍など感染を起こしやすい病変が広範囲にある場合は特に注意が必要です。