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デスモグレインと犬の天疱瘡症状と治療

デスモグレインと犬の天疱瘡

犬の天疱瘡と関わるデスモグレインの概要
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デスモグレインの機能

皮膚細胞同士をつなぐ接着タンパク質として重要な役割を果たす

自己免疫攻撃

免疫系統がデスモグレインを異物と誤認し攻撃してしまう

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犬の天疱瘡発症

皮膚のつながりが破綻し水疱やかさぶたができる病気

デスモグレインの犬皮膚における役割と重要性

デスモグレインは、犬の皮膚において細胞と細胞をつなぐ重要な接着タンパク質です 。このタンパク質は、表皮の細胞(角化細胞)が正常につながることで、健康な皮膚バリア機能を維持しています 。デスモグレインには複数の種類があり、デスモグレイン1(Dsg1)とデスモグレイン3(Dsg3)が特に重要な役割を果たします 。
デスモグレイン1は主に皮膚の表層部分に存在し、落葉状天疱瘡の主要な攻撃対象となります 。一方、デスモグレイン3は真皮に近いより深い部分の表皮に存在し、尋常性天疱瘡で攻撃される主要なタンパク質です 。これらのタンパク質が正常に機能することで、犬の皮膚は外部環境からの刺激や病原体から身体を守ることができます。
皮膚のデスモソーム構造において、デスモグレインは他の接着分子であるデスモコリンとともに細胞間接着を担っています 。この複雑な接着システムが破綻することで、犬の天疱瘡が発症するメカニズムが始まります。

参考)犬の落葉状天疱瘡の症状と原因、治療法について

犬天疱瘡における免疫系統の異常反応メカニズム

犬の天疱瘡は、本来身体を守るはずの免疫系統が、自分の皮膚に存在するデスモグレインを異物として認識してしまう自己免疫疾患です 。正常な免疫系統は、細菌やウイルスなどの外部からの脅威を識別して攻撃しますが、天疱瘡では this recognition system が異常をきたします 。
免疫系統の異常により、デスモグレインに対する自己抗体が産生され、これらの抗体が皮膚の細胞間接着を直接障害します 。落葉状天疱瘡では主にデスモグレイン1に対する抗体が、尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3に対する抗体が検出されます 。

参考)犬、猫の皮膚病(自己免疫疾患:落葉状 天疱瘡) href=”http://www.harue-vet.com/news/?p=1567″ target=”_blank”>http://www.harue-vet.com/news/?p=1567amp;#8212…

この免疫攻撃により、細胞同士のつながりが失われた棘融解細胞(きょうゆうかいさいぼう)が形成され、皮膚に膿疱や水疱が発生します 。さらに、継続的な免疫攻撃により皮膚の炎症が持続し、かさぶたや脱毛などの慢性的な症状が現れます 。

参考)犬の自己免疫性皮膚疾患|獣医師が解説|横浜市青葉区の夕やけの…

犬天疱瘡の症状と好発犬種の特徴

犬の天疱瘡は、症状によって落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、紅斑性天疱瘡の3つに分類されます 。落葉状天疱瘡は犬で最も多く見られる型で、4~5歳の犬に発症しやすいとされています 。初期症状として、鼻すじ、耳介、目の周囲に膿疱や丘疹が現れ、これらが破れることでびらんやかさぶたを形成します 。

参考)犬の天疱瘡の原因と症状、治療法や予防について

好発犬種として、秋田犬チャウチャウダックスフンド、ベアデッドコリー、ドーベルマンピンシェルなどが知られており、遺伝的要因の関与が示唆されています 。特に白い毛色の犬に比較的多く発症するという報告もあり、紫外線との関連性が指摘されています 。

参考)落葉性天疱瘡 – たけふ動物医療センター

尋常性天疱瘡では、口唇やまぶた、肛門周囲などの皮膚と粘膜の境界部に水疱やびらんが形成され、強い痒みを伴います 。症状が重篤化すると、かき壊しによる二次感染のリスクが高まり、適切な治療を行わない場合には死亡に至ることもあります 。

犬天疱瘡の診断方法と検査技術

犬の天疱瘡の確定診断には、複数の検査法を組み合わせた総合的なアプローチが必要です 。最初に行われるのは、病変部の細胞診検査で、膿疱や水疱内の液体を採取して顕微鏡で観察します 。この検査では、天疱瘡に特徴的な棘融解細胞や好中球の集積を確認できます。

参考)KAKEN href=”https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380187/” target=”_blank”>https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380187/amp;mdash; 研究課題をさがす

病理組織検査は確定診断のゴールドスタンダードとされ、病変部の皮膚を生検して組織のまとまり状態を詳細に観察します 。特殊な染色法を用いることで、デスモグレインに対する自己抗体の存在を検出することが可能です 。
血清学的診断では、血清中に含まれる抗デスモグレイン抗体の検査を行います 。デスモグレイン融合タンパクを用いたELISA法により、尋常性天疱瘡症例の約67%で陽性反応が確認されています 。ただし、細菌の二次感染を除外するため、細菌培養・感受性試験も同時に実施する必要があります 。

犬天疱瘡の絶食と栄養管理の重要性

犬の天疱瘡治療において、絶食管理は特に尋常性天疱瘡で口腔粘膜に病変がある場合に重要な考慮事項となります。口の中にびらんや潰瘍が形成されると、摂食時の痛みにより食欲不振や体重減少が起こりやすくなります 。しかし、長期の絶食は絨毛の萎縮や消化管吸収障害をもたらすため、適切な栄養管理が必要です 。

参考)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/attach/pdf/shiken-112.pdf

治療初期の急性期には、軟らかい食事や流動食への変更が推奨されます。口腔内の痛みを軽減するため、冷たい食事よりも人肌程度の温度の食事が適しています。また、酸性度の高い食品や香辛料を含む食品は、病変部の刺激となるため避ける必要があります。

栄養状態の維持は免疫機能や創傷治癒に直接影響するため、必要に応じて栄養補助食品やビタミン剤の併用を検討します 。特に長期間のステロイド治療を受ける犬では、タンパク質の異化亢進や筋肉量の減少が懸念されるため、高品質なタンパク質の摂取が重要になります。

犬天疱瘡の最新治療アプローチと予後管理

犬の天疱瘡治療は、症状の完全な寛解を目標とした長期的なアプローチが必要です 。第一選択薬として、プレドニゾロンなどのコルチコステロイドが用いられ、免疫抑制効果により自己抗体の産生を抑制します 。初期治療では高用量から開始し、症状の改善に応じて段階的に減量していきます。
ステロイド単独での治療が困難な場合や、副作用を軽減するために、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤が併用されます 。特にシクロスポリンは、落葉状天疱瘡において優れた治療効果を示した症例報告があります 。

参考)シクロスポリンが奏功した落葉状天疱瘡の犬の1例

最近の治療法として、テトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法や、0.1%タクロリムス外用療法などの新しいアプローチも検討されています 。これらの治療法は、従来のステロイド治療と比較して副作用が少なく、長期管理に適している可能性があります。

参考)0.1%タクロリムス外用療法を行った紅斑性天疱瘡の犬の1例

細菌の二次感染が認められる場合には、適切な抗生物質の投与が必要です 。また、紫外線による症状悪化を防ぐため、直射日光を避ける環境管理も重要な治療の一環となります 。治療は生涯にわたって継続する必要があることが多く、定期的な血液検査による薬剤モニタリングと症状評価が不可欠です 。

参考)天疱瘡 [犬]|【獣医師監修】うちの子おうちの医療事典