グレートデーンのかかりやすい病気と寿命
グレートデーンの平均寿命と短命の理由
グレートデーンの平均寿命は7~10年と、他の犬種と比較して短命です。小型犬の平均寿命が12~15歳、大型犬全体でも10~12歳とされる中で、グレートデーンは特に短い傾向にあります。
この短命の理由として、最も有力な説は体の大きさに対して内臓のスペックが不足していることです。人間と同じくらいの体重(60~70kg)以上になるグレートデーンは、スーパーカーのボディに一般的な自動車のエンジンを搭載したような不釣り合いな状態となっており、心肺機能に常に負担がかかっています。
また、体が大きすぎるために代謝が速く、体内で活性酸素を生じやすいため老化が進行しやすいという説もあります。現代の飼育技術や医学を駆使してもこの問題を完全に解決できていないのが現状です。
人間の年齢に換算すると、グレートデーンの8歳は人間の60代半ばに相当し、10歳で人間の75歳程度となります。このことからも、いかに短期間で老化が進むかが理解できるでしょう。
グレートデーンの骨肉腫と関節疾患
グレートデーンが最も注意すべき病気の一つが骨肉腫です。これは骨のガンで、超大型犬に多く発症する悪性腫瘍です。特に脚の骨に発生することが多く、若いうちに発症すると進行が非常に速いため、早期発見が生死を分けます。
骨肉腫の初期症状として以下が挙げられます。
- 散歩を嫌がるようになる
- 脚が腫れている
- 触ると痛がる様子を見せる
- しこりが確認できる
- 跛行(びっこを引く)
予防策として、飼育スペースにクッション性のある床材を敷くことで、関節への負担を軽減できます。硬い床での生活は骨や関節に継続的なストレスを与えるため、カーペットやマットの使用が推奨されます。
また、股関節形成不全も大型犬に多い疾患です。これは股関節の発育異常により、関節が正常に機能しなくなる病気で、遺伝的要因が強く関与しています。症状が進行すると歩行困難や激しい痛みを伴うため、子犬の頃からの適切な運動管理が重要です。
グレートデーンの心疾患と循環器系の病気
拡張型心筋症は、グレートデーンにとって命に関わる重要な疾患です。心臓の筋肉が弱くなり、血液を送り出すポンプ機能が低下することで、全身の循環不全を引き起こします。
この病気の特徴的な症状。
- 食欲不振
- 元気がない
- 呼吸困難
- 体重減少
- 運動を嫌がる
拡張型心筋症の恐ろしい点は、初期症状が軽微で見過ごされやすいことです。食欲の低下や体重減少などの症状が見られない場合もあるため、定期的な健康診断での心電図検査や心エコー検査が不可欠です。
治療は薬物療法が中心となりますが、完治には外科手術が必要な場合もあり、手術費用は約30万円程度かかります。早期発見により薬物療法で症状をコントロールできれば、生活の質を維持しながら寿命を延ばすことが可能です。
グレートデーンの胃捻転と消化器疾患
胃捻転は、グレートデーンにとって緊急性の高い疾患です。胃が拡張してねじれることで血液循環が阻害され、ショック状態に陥る可能性があります。他の大型犬種よりも早食いや一気食いによる発症リスクが高いとされています。
胃捻転の予防策。
- 食事を数回に分けて与える
- 食事台を高くして首を下げずに食べられるようにする
- 食後は激しい運動を避け、静かに過ごさせる
- ストレスを軽減する環境作り
近親に胃疾患の履歴がある場合、ガスロペキシーという予防手術が推奨されます。これは胃を腹壁に縫い付けることで捻転を防ぐ手術で、去勢手術と同時に行われることが多いです。
胃捻転は数時間で命に関わる状態になるため、以下の症状が見られた場合は即座に救急病院を受診する必要があります。
- 急激な腹部の膨張
- 嘔吐しようとするが何も出ない
- よだれが大量に出る
- 落ち着きがなくなる
グレートデーンのアジソン病と内分泌疾患の独自対策
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、グレートデーンに特に多く見られる内分泌疾患です。副腎から分泌されるホルモンが不足することで引き起こされ、「隠れた病気」とも呼ばれるほど診断が困難な疾患です。
アジソン病の特徴的な症状。
- 慢性的な疲労感
- 食欲不振
- 体重減少
- 時々の嘔吐
- 元気がない状態が続く
この病気の最も危険な点は、ストレスや感染症などをきっかけにアジソンクリーゼと呼ばれる急性症状を起こすことです。この状態では血圧低下、脱水、ショック状態に陥り、緊急治療が必要となります。
独自の予防・管理アプローチとして、以下の点が重要です。
- 定期的なストレスホルモン値の測定
- 環境変化を最小限に抑える
- 免疫力向上のための栄養管理
- 早期発見のための月1回の体重測定
アジソン病は完治が困難な疾患ですが、適切なホルモン補充療法により正常な生活を送ることができます。重要なのは、軽微な症状を見逃さず、定期的な血液検査でホルモン値をモニタリングすることです。
興味深いことに、アジソン病の発症には遺伝的要因だけでなく、現代の都市環境におけるストレス要因も関与していると考えられています。室内飼育が推奨されるグレートデーンにとって、適度な刺激と安定した環境のバランスを保つことが、この疾患の予防に繋がる可能性があります。