皮膚疾患（犬）症状と治療方法
皮膚疾患の主な症状と早期発見のポイント
犬の皮膚疾患は非常に多く見られる病気で、愛犬が頻繁に体をかいたり舐めたりする行動が見られた場合は注意が必要です。皮膚疾患の早期発見には、日常的な観察が欠かせません。
主な症状として以下のようなものが挙げられます。
- かゆみの症状 – 愛犬が同じ場所を繰り返しかく、舐める、毛をむしる行動
- 皮膚の変化 – 赤み、腫れ、ぶつぶつとした発疹の出現
- 被毛の異常 – 脱毛、フケの増加、毛艶の悪化
- 皮膚表面の変化 – かさぶたの形成、皮膚の厚化、色素沈着
- 臭いの変化 – 特有の強い臭いや脂っぽい臭いの発生
季節の変わり目には皮膚トラブルが増える傾向にあり、特に春から夏にかけての暖かい時期にマラセチア皮膚炎などが発症しやすくなります。愛犬の行動変化を見逃さないよう、日頃から注意深く観察することが大切です。
皮膚疾患の種類別原因と特徴
犬の皮膚疾患には様々な種類があり、それぞれ原因や特徴が大きく異なります。主要な皮膚疾患の種類と特徴を詳しく見ていきましょう。
アレルギー性皮膚疾患
アトピー性皮膚炎は、ハウスダストや食べ物などのアレルゲンが皮膚内部に侵入することで発症します。生後6ヶ月から3歳頃までの若齢期に発症することが多く、顔周りや足先、脇などの皮膚が擦れる部分に症状が現れやすいのが特徴です。特に柴犬、シーズー、トイプードルといった犬種で多く見られます。
真菌性皮膚疾患
マラセチア皮膚炎は、皮膚表面に常在するマラセチア菌の異常繁殖により発症します。皮脂を栄養源として増殖するため、皮膚がベタベタし、脂っぽい臭いが特徴的です。シーズーやアメリカンコッカースパニエルなど皮脂の多い犬種でよく見られます。
皮膚糸状菌症は、カビである糸状菌の感染により起こり、免疫力の低い子犬や老犬に発症しやすく、人にも感染する可能性があります。
細菌性皮膚疾患
膿皮症は、皮膚に常在するブドウ球菌の異常増殖により発症し、基礎疾患による皮膚バリア機能の低下が原因となることが多いです。
寄生虫性皮膚疾患
疥癬は、ヒゼンダニの寄生により激しいかゆみを引き起こし、犬から犬、犬から人への感染も可能です。ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に対するアレルギー反応で広範囲の強いかゆみが特徴です。
皮膚疾患の診断方法と検査プロセス
皮膚疾患の正確な診断には、問診と身体検査に加えて、複数の専門的な検査が必要です。獣医師は症状の程度や部位を詳しく観察し、適切な検査方法を選択します。
基本的な診断アプローチ
まず、全身の身体検査と詳細な問診を行い、症状の経過や生活環境について確認します。その後、原因を特定するための専門的な皮膚検査を実施します。
主要な検査方法
- 皮膚掻爬検査（スクレイピング検査） – 皮膚を引っ掻いて顕微鏡で寄生虫や細菌を調べる検査で、疥癬やニキビダニの発見に効果的です
- ウッド灯検査 – 紫外線を患部に当てて皮膚糸状菌の有無を確認する検査です
- セロハンテープ試験 – セロハンテープを患部に押し当て、特殊染色後に顕微鏡観察を行います
- 抜毛検査 – 患部の毛を抜いて顕微鏡で観察し、ニキビダニなどの寄生虫を検出します
- アレルギー検査 – 血液検査や皮膚反応テストにより、食物アレルギーや環境アレルギーを特定します
これらの検査結果を総合的に判断し、最適な治療方針を決定します。検査には若干の痛みや出血を伴う場合もありますが、正確な診断のために必要不可欠です。
皮膚疾患の治療法と薬物療法
皮膚疾患の治療は原因によって大きく異なり、多くの場合、複数の治療法を組み合わせることで効果的な結果が得られます。治療の基本原則は、根本原因の除去と症状のコントロールです。
薬物療法の種類と特徴
- 抗ヒスタミン薬・ステロイド – かゆみや炎症を抑える効果があり、症状や副作用リスクを見ながら投薬量や期間を調整します
- 免疫抑制剤・JAK阻害薬（アポキル） – 免疫反応を調整し、慢性的なかゆみを効果的に抑制します
- 抗真菌薬 – 皮膚糸状菌症の治療に使用され、内服治療が中心となります
- 駆虫薬 – 疥癬などの寄生虫性皮膚炎に対して、塗布や内服により使用されます
- 抗生剤 – 細菌性皮膚炎に対して、外用療法と併用して内服治療を行います
外用療法・シャンプー療法
薬用シャンプーを使った治療は、多くの皮膚疾患において基本的かつ効果的な治療法です。マラセチア性皮膚炎、細菌性皮膚炎、脂漏性皮膚炎には、それぞれに適した薬用シャンプーを使用します。
シャンプー療法では、皮膚を清潔に保ち、皮膚表面のアレルゲンや汚れを洗い流すことで症状の改善を図ります。ただし、シャンプーの種類や洗浄頻度は愛犬の皮膚状態に応じて調整する必要があります。
その他の治療法
- 食事療法 – アレルギー反応を起こしにくい加水分解タンパク質フードや除去食を使用します
- 免疫療法（減感作療法） – アレルゲンを少しずつ投与して体を慣れさせる根本的な治療法です
- 環境改善 – アレルゲンの除去や生活環境の整備を行います
皮膚疾患予防のための日常ケアと生活習慣改善
皮膚疾患の予防は治療と同じく重要で、日常的なケアと生活環境の管理により、多くの皮膚トラブルを未然に防ぐことができます。
効果的な予防策
- 定期的なスキンケア – 薬用シャンプーやブラッシングにより皮膚病の原因を抑制・除去できます
- 生活環境の管理 – 適切な温度・湿度の維持により細菌増殖や乾燥を防ぎ、症状悪化を抑制します
- 害虫・寄生虫対策 – 定期的な駆虫により皮膚病発症だけでなく、人間や他動物への感染も予防できます
- アレルギー検査の実施 – アレルギー反応を起こす可能性がある物質や食品を事前に把握できます
日常ケアのポイント
皮膚を清潔に保つための定期的なシャンプーやブラッシングは効果的ですが、過度なシャンプーは皮膚の自然な油分を除去し、逆に皮膚炎を悪化させる可能性があります。そのため、シャンプーの種類や頻度には十分な注意が必要です。
環境アレルゲン対策
ハウスダストや花粉などの環境アレルゲンを減らすため、定期的な掃除や空気清浄機の使用が推奨されます。また、愛犬の寝床やおもちゃの清潔維持も重要な予防策です。
栄養管理と食事
皮膚の健康維持には適切な栄養バランスが欠かせません。オメガ3脂肪酸やビタミンEなど、皮膚の健康をサポートする栄養素を含む高品質なフードの選択が重要です。
定期的な健康チェック
動物病院での定期受診により、皮膚にいる細菌や寄生虫の状態を確認し、皮膚病の発症リスクを早期に発見できます。症状が見られた場合は、自己判断せず速やかに獣医師に相談することが、愛犬の皮膚健康維持の鍵となります。
皮膚疾患は慢性化しやすい特徴があるため、予防的なアプローチと早期対応により、愛犬の生活の質を大幅に改善することができます。