犬おしりをあげる病気と症状の見極め
犬の膵炎による祈りのポーズの特徴
犬が膵炎を患った際に見せる「祈りのポーズ」は、単なる遊びの誘いとは明らかに異なる症状です。急性膵炎では激しい腹痛により、前足を床につけて上半身を低くし、お尻を高く上げる姿勢を取ります。
この姿勢の特徴は以下の通りです。
- 表情が苦しそうで元気がない
- 食欲不振を伴う
- 繰り返す嘔吐がある
- 尻尾を振らない
- 長時間その姿勢を保持する
膵炎は多臓器不全に発展する可能性がある緊急性の高い病気であり、放置すると命に関わる危険があります。最悪の場合、重症化により死に至る可能性もあるため、このようなポーズを見つけた際は速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
犬の肛門嚢炎とお尻を上げる行動の関連性
肛門嚢炎は犬がお尻を上げる行動を示す代表的な病気の一つです。肛門嚢は犬が縄張りを主張する分泌液を蓄える小さな袋で、通常は便と一緒に自然に排出されます。
しかし、以下の状況で肛門嚢炎が発症します。
- 細菌感染による炎症
- 肛門嚢の開口部閉塞
- 分泌液の蓄積による炎症
症状として、犬は以下の行動を見せます。
- お尻を床にこすりつける「おしり歩き」
- 肛門周りを執拗に舐める
- しっぽを追いかける行動
- お尻を上げる不自然な姿勢
特に小型犬のトイ・プードルは肛門嚢炎になりやすい傾向があります。進行すると肛門嚢が破裂する恐れもあるため、早期治療が必要です。
犬の消化器疾患による腹痛のサイン
消化器系の疾患により腹痛を感じた犬も、お尻を上げる特徴的な姿勢を取ることがあります。この症状は「祈りのポーズ」と呼ばれ、腹部の痛みを軽減しようとする自然な反応です。
主な消化器疾患には以下があります。
これらの疾患では以下の症状が併発します。
- 嘔吐や下痢
- 食欲不振
- 元気消失
- 排便・排尿異常
獣医師による診察では、元気の有無、食欲、嘔吐や下痢の症状を総合的に評価し、適切な診断を行います。
犬の肛門周囲の病気とお尻を気にする行動
肛門周辺の疾患は犬がお尻を異常に気にする行動の原因となります。代表的な疾患として肛門周囲腺腫があり、これは去勢していない高齢の雄犬に頻発する病気です。
肛門周囲腺腫の特徴。
- 雄性ホルモンが関与する腫瘍
- 進行すると出血や化膿を起こす
- 排便困難を引き起こす可能性
- 触ると痛がる・怒る反応
その他の肛門周辺疾患。
- 会陰ヘルニア:未去勢の雄の老犬に多い
- 皮膚炎:バリカンによる刺激や下痢の影響
- 瓜実条虫の寄生:ノミを媒介とする寄生虫
これらの疾患では、犬は以下の行動を示します。
- おしり歩きをする
- 肛門周りを舐める
- お尻を床にこすりつける
- 排便時に痛がる
犬のプレイバウと病気の区別方法
健康な犬が見せるプレイバウと病気による姿勢の区別は、飼い主にとって重要な知識です。プレイバウは「遊ぼうよ!」という意味の社交的な行動で、「敵意がないから落ち着いて」というカーミングシグナルの一種でもあります。
健康なプレイバウの特徴。
- 明るい表情と尻尾を振る動作
- 短時間で終わる
- おもちゃを持参することがある
- 吠えて誘うことがある
- 食欲や元気に問題がない
病気による姿勢との違い。
- 表情が暗く苦しそう
- 長時間その姿勢を維持
- 食欲不振や嘔吐を伴う
- 触ろうとすると嫌がる
- 元気がなく活動量が低下
ゴールデンレトリーバーなどの活発な犬種は、ディスク遊びなどの前に典型的なプレイバウを見せることが多く、これは正常な行動です。一方、普段プレイバウをしない犬が突然この姿勢を取る場合は、病気の可能性を疑う必要があります。
早期発見のためには、愛犬の普段の行動パターンを把握し、いつもと違う様子に敏感に気づくことが重要です。少しでも異常を感じた場合は、迷わず獣医師に相談することをお勧めします。