下部尿路とは何かを知る
下部尿路とは膀胱から尿道までの範囲
犬の尿路は、大きく分けて上部尿路と下部尿路に分類されます。上部尿路は腎臓から尿管まで、そして下部尿路は膀胱から尿道の出口までの範囲を指します。
具体的な下部尿路の構造。
- 膀胱:尿を一時的に貯蔵する袋状の器官
- 膀胱頸部:膀胱と尿道をつなぐ部分
- 尿道:膀胱から体外へ尿を排出する管
この下部尿路で発生した病気の総称を「下部尿路疾患」と呼び、犬の泌尿器疾患の中でも特に多く見られる問題です。膀胱炎、尿路結石症、尿道炎などが含まれ、症状としては頻尿、血尿、排尿困難などが現れます。
下部尿路疾患の主な症状と見分け方
愛犬の下部尿路疾患を早期発見するためには、普段からの観察が重要です。以下のような症状が見られたら注意が必要です。
典型的な症状一覧。
- 一日に何度もトイレに行く(頻尿)
- トイレに行っても尿が出ない、または少量しか出ない
- おしっこをするときに痛そうな声を出す
- 血尿が出る(尿が赤っぽい、血が混じっている)
- トイレ以外の場所での粗相が増える
- 尿の色がいつもと違う(濃い、薄い)
- 尿の臭いがきつくなった
緊急性の高い症状。
- 嘔吐を伴う
- 完全に尿が出なくなる(尿道閉塞の可能性)
- お腹を触られるのを極端に嫌がる
特に、完全に尿が出なくなった場合は、腎不全や尿毒症へと進行する可能性があり、一刻も早い治療が必要です。
下部尿路疾患の原因と発症メカニズム
下部尿路疾患の発症には複数の要因が関与しています。最も多い疾患である尿路結石症の原因を中心に解説します。
主な原因。
- 細菌感染:細菌が出す酵素により尿がアルカリ性になり結石形成を促進
- ミネラル過剰:カルシウムやマグネシウムの過剰摂取
- 水分摂取不足:尿が濃縮され結石が形成されやすくなる
- 肥満:代謝異常により結石リスクが上昇
- 遺伝的素因:特定の犬種での発症リスク
季節的な要因。
冬季は水分摂取量が減少するため、下部尿路疾患の発症率が高くなることが知られています。涼しくなると夏場よりも水を飲む量が減り、尿が濃縮されやすくなるためです。
犬種による差異。
小型犬は大型犬よりも発症リスクが高く、特にヨークシャー・テリア、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードルなどで多く見られます。また、メスの方がオスよりも発症しやすい傾向があります。
下部尿路疾患の診断と検査方法
下部尿路疾患の適切な診断には、複数の検査を組み合わせることが重要です。
基本的な検査項目。
- 尿検査:pH測定、結晶の有無、細菌の確認
- 腹部超音波検査:膀胱の状態、結石の確認
- レントゲン検査:大きな結石や膀胱の形状確認
- 造影検査:必要に応じて尿道の詳細な状態を確認
診断のポイント。
尿検査では試験紙でpHを調べるほか、尿中の結晶や細菌をチェックします。結晶の種類により治療方針が変わるため、詳細な分析が必要です。
検査の頻度。
下部尿路疾患になりやすい犬種や一度発症したことがある犬は、少なくとも半年に1回の尿検査を受けることが推奨されます。特に症状がない場合でも、定期的な検査により早期発見が可能になります。
意外な事実として、若い犬でも尿路結石が発症することがあります。4ヶ月齢のバーニーズマウンテンドッグでストルバイト結石による尿管閉塞が報告されており、年齢に関わらず注意が必要です。
下部尿路疾患の予防と愛犬の生活環境改善
下部尿路疾患の予防には、日常的な健康管理と生活環境の改善が効果的です。
水分摂取の促進。
- 新鮮な水をいつでも飲めるよう複数箇所に水入れを設置
- 水温を体温に近づけることで飲水量を増加
- ウェットフードの活用による間接的な水分補給
- 冬季は特に意識的な水分摂取の促進
食事管理のポイント。
- 下部尿路ケア用の専用フードの利用
- カルシウム、マグネシウムなどのミネラル量の調整
- 消化の良い食事の選択
- 肥満予防のための適切なカロリー管理
生活環境の改善。
- トイレの清潔維持と適切な設置場所の確保
- ストレスの軽減(騒音、環境変化の最小化)
- 適度な運動による血液循環の促進
- 排尿を我慢させない環境作り
独自の予防アプローチ。
意外にも、犬の排尿姿勢の観察も重要な予防策の一つです。普段と異なる姿勢を取ったり、排尿時間が長くなったりする場合は、軽微な不調のサインかもしれません。また、排尿後の行動(草を蹴る、その場に長く留まるなど)の変化も健康状態の指標となります。
参考リンク(下部尿路疾患の詳細な症状と対処法について)。
尿路結石について(犬) | 港南区の動物病院OCEAN’S PET CARE
参考リンク(獣医師による下部尿路疾患の専門的解説)。