老犬陰部出血症状別診断
老犬陰部出血の緊急度判定法
老犬の陰部出血は、症状の組み合わせによって緊急性を判断する必要があります。
🚨 緊急受診が必要な症状
- 膿の混じった血様分泌物と多飲多尿の併発
- 食欲不振、元気消失、発熱を伴う出血
- 腹部膨満感と排膿がある場合
- 発情出血から2ヶ月以内の大量出血
⚠️ 経過観察可能だが注意が必要な症状
- 元気・食欲が正常で持続する少量の分泌物
- 避妊手術済みでの粘性分泌物
- 外陰部の軽度腫脹のみ
緊急性の判断で最も重要なのは、出血以外の全身症状の有無です。子宮蓄膿症では発情出血後1-2ヶ月で発症することが多く、開放型(排膿あり)と閉鎖型(排膿なし)に分けられ、閉鎖型の方が重症化しやすい傾向があります。
老犬陰部出血の主要原因別症状
老犬の陰部出血には複数の原因があり、それぞれ特徴的な症状パターンを示します。
子宮蓄膿症による出血の特徴
子宮蓄膿症は7歳を超えた未避妊の雌犬で最も多く見られる疾患です。症状は以下の通りです:
- 血膿(ちうみ)と呼ばれる濃い赤色の分泌物
- 水を飲む量と尿の量の著明な増加
- 元気消失と食欲不振
- 腹部膨満と発熱
- 発情出血後1-2ヶ月での発症
膣炎による出血の特徴
膣炎は避妊手術済みの犬でも発症する疾患です:
- 粘性のあるねっとりした膿様分泌物
- 元気・食欲は正常に保たれることが多い
- 持続性で治療に抵抗性を示すことが多い
- 高齢犬やおむつ使用犬に頻発
- 陰部周囲の二次的皮膚炎を併発することがある
腫瘍性疾患による出血
膣や子宮の腫瘍では以下の症状が見られます:
- 間欠的な鮮血の出血
- 外陰部から赤い塊状のものが突出
- 排尿・排便障害を伴う場合がある
- 外陰部を頻繁に舐める行動
老犬陰部出血時の応急処置方法
陰部出血を発見した際の適切な対処法は、症状の程度によって異なります。
即座に行うべき応急処置
まず出血部位を清潔なタオルやガーゼで軽く押さえ、出血量を確認します。強くこすらず、優しく汚れを拭き取ることが重要です。
- 陰部周囲の毛を短くカットして汚れの付着を防ぐ
- ぬるま湯で希釈した消毒液での軽い洗浄
- 清潔なタオルでの水分除去
- 出血量や分泌物の性状を記録
継続的なケア方法
膣炎などの慢性疾患では、自宅でのケアが症状軽減に効果的です:
- 膣内洗浄の実施
- 獣医師の指導のもと専用洗浄液を使用
- 1日2-3回の頻回洗浄で細菌数をコントロール
- 環境管理
- おむつの適切な使用(つけっぱなしを避ける)
- 陰部の清潔維持と乾燥
- 床材の工夫で分泌物による汚染を最小限に
やってはいけない処置
- 市販の人用消毒薬の使用
- 強い力での洗浄やこすり洗い
- 無理な異物除去の試み
- 自己判断での薬剤投与
老犬陰部出血の治療選択肢
老犬の陰部出血治療は、原因疾患によって大きく異なるアプローチが必要です。
子宮蓄膿症の治療法
最も確実な治療は卵巣子宮摘出術です:
- 外科治療: 全身麻酔下での卵巣・子宮摘出
- 術前管理: 脱水補正、電解質バランス調整
- 術後ケア: 抗生物質投与、感受性検査実施
- 治療費: 1回あたり約5,400円、年間2回程度の通院
高齢犬や麻酔リスクが高い場合は内科的治療も選択されますが、根治は困難です。
膣炎の治療アプローチ
膣炎は完治が困難な疾患のため、症状管理が中心となります:
- 抗生物質療法: 薬剤感受性試験に基づく選択
- 局所療法: 膣内洗浄、抗菌薬の膣内投与
- 外科的治療: 腫瘍や異物が原因の場合の摘出術
- 対症療法: 陰部周囲の皮膚炎治療
腫瘍性疾患の治療
良性腫瘍でも症状が強い場合は外科的切除が推奨されます:
- 良性腫瘍: 平滑筋腫、線維腫の外科的摘出
- 悪性腫瘍: 平滑筋肉腫、腺癌の拡大切除
- 化学療法: 悪性例での術後補助療法
- 緩和ケア: 手術適応外の高齢犬での症状緩和
老犬陰部出血予防の生活習慣改善
日常生活の工夫により、陰部出血のリスクを大幅に軽減できます。
最も効果的な予防策: 避妊手術
6歳までの避妊手術により子宮蓄膿症を完全に予防できます:
- 初回発情前の手術で乳腺腫瘍リスクも激減
- 高齢での手術は麻酔リスクが高まるため早期実施が重要
- 繁殖予定がない場合は積極的な検討が必要
日常ケアでの予防ポイント
高齢犬では免疫力低下により膣炎リスクが増加するため、以下のケアが重要です:
- 陰部の清潔管理
- 排泄後の適切な清拭
- 陰部周囲毛のトリミング
- 湿潤環境の回避
- 全身状態の維持
- 適度な運動による免疫力維持
- 栄養バランスの取れた食事
- ストレス軽減
- 定期健診の実施
- 年2回以上の獣医師による検査
- 発情周期の記録と管理
- 異常な分泌物の早期発見
見落としがちな環境要因
意外に重要なのが生活環境の管理です。
- おむつ使用時の適切な交換頻度
- 寝床の清潔維持と通気性確保
- 肛門腺疾患による二次感染の予防
- 他の犬からの舐め行為による感染拡大防止
老犬の陰部出血は、適切な知識と早期対応により深刻な事態を避けることができます。日頃からの観察と予防的ケアが愛犬の健康維持に不可欠です。