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内耳炎の症状・原因・治療法と愛犬の予防対策

内耳炎の症状・原因・治療法

愛犬の内耳炎:知っておくべき重要ポイント
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深刻な神経症状

斜頸・眼振・旋回運動など、バランス感覚に関わる症状が現れます

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早期発見が鍵

外耳炎の段階での適切な治療により内耳炎への進行を防げます

💊

長期治療が必要

抗生物質による6~8週間の治療が基本となります

内耳炎の主な症状と重篤度の見極め方

犬の内耳炎で最も特徴的な症状は、平衡感覚に関わる神経症状です。

重篤な神経症状

  • 斜頸(首を傾けて戻らない)
  • 眼振(黒目が左右に揺れる)
  • 旋回(一方向にぐるぐる回る)
  • 歩行困難(立とうとしても倒れる)
  • 協調運動障害(バランスが取れない)

これらの症状は急に現れることが多く、愛犬の日常生活に深刻な影響を与えます。

併発する全身症状

内耳の炎症により、以下の症状も現れることがあります:

  • 嘔吐・食欲不振
  • 元気消失
  • 聴力の低下
  • 耳に触れるのを極度に嫌がる

ホルネル症候群について

内耳炎が進行すると、ホルネル症候群と呼ばれる交感神経麻痺が起こることがあります。この場合、瞬膜の突出、縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥没といった症状が片側性に現れ、症状が出ている側の耳の温度上昇や発汗も見られます。

重要なのは、これらの症状は腫瘍や特発性前庭疾患でも見られるため、専門的な鑑別診断が必要な点です。

内耳炎の原因と進行メカニズムの詳細

犬の内耳炎は、ほぼすべてのケースで外耳炎→中耳炎→内耳炎という段階的な進行をたどります。

外耳炎から内耳炎への進行過程

  1. 外耳炎の発症:アレルギー性疾患、細菌感染、マラセチアの増殖、寄生虫、異物などが原因
  2. 鼓膜への影響:外耳炎の滲出液や炎症性産物により鼓膜の上皮やコラーゲンが壊死
  3. 鼓膜穿孔:脆弱になった鼓膜に穿孔が生じ、耳垢や微生物が中耳に侵入
  4. 中耳炎の発症:中耳粘膜が刺激され、細菌感染による炎症が起こる
  5. 内耳への波及:中耳の炎症が内耳まで進行し、内耳炎が発症

意外な原因:歯周炎との関連

あまり知られていない事実として、歯周炎などの歯の疾患が内耳炎の原因となることがあります。口腔と中耳をつなぐ耳管を通って炎症が波及し、最終的に内耳に到達するケースが報告されています。

細菌・真菌の種類と特徴

内耳炎を引き起こす主な病原体には以下があります:

  • ブドウ球菌・大腸菌(細菌性)
  • マラセチア・酵母菌(真菌性)
  • 耳ダニなどの寄生虫

細菌性の場合、抗生物質に対する耐性菌が問題となることも多く、適切な薬剤感受性試験が重要になります。

内耳炎の治療法と回復期間の実際

内耳炎の治療は、中耳炎の治療法をベースとしつつ、より長期間にわたる管理が必要です。

基本的な内科治療

  1. 抗生物質の長期投与:通常6~8週間程度の治療期間が必要
  2. 消炎剤の併用:抗生物質と併せて内服することが多い
  3. 薬剤感受性試験:長期間の抗生物質使用歴がある場合は細菌培養検査を実施

外科的治療が必要な場合

内科治療で改善が見られない場合は、以下の外科的処置を検討します:

  • 鼓室洗浄とビデオオトスコープによる異物除去
  • 耳道切開術
  • 鼓室胞切開術
  • 耳道切除術

治療における重要なポイント

  • 早期診断・早期治療ができた場合は良好な回復が期待できる
  • しかし、内耳炎は中耳炎よりも治療反応が悪く、神経症状が残存するリスクが高い
  • CT検査やMRI検査による詳細な画像診断が治療方針の決定に重要

治療中の注意事項

治療期間中は定期的な経過観察が必要で、症状の改善が見られない場合は治療法の見直しを行います。特に神経症状については、完全な回復に数ヶ月を要する場合もあります。

内耳炎になりやすい犬種の特徴と遺伝的要因

内耳炎は全犬種で発症する可能性がありますが、特定の身体的特徴を持つ犬種では発症リスクが高くなります。

垂れ耳犬種(通気性不良)

垂れ耳は外耳道の通気性を悪化させ、湿度を高めることで細菌や真菌の繁殖環境を作りやすくします。

外耳道有毛犬種(耳垢蓄積要因)

外耳道に生える毛は耳垢の排出を妨げ、炎症の温床となります。

短頭種(解剖学的要因)

短頭種は呼吸器系の構造的問題により、耳管の機能にも影響が及ぶことがあります。

耳道狭窄犬種

先天的に耳道が狭い犬種では、わずかな炎症でも閉塞を起こしやすく、重篤化するリスクが高まります。

アレルギー好発犬種

柴犬やヨークシャー・テリアなどの皮膚アレルギーを起こしやすい犬種も、外耳炎から内耳炎への進行リスクが高いとされています。

内耳炎予防のための日常ケアと愛犬の健康管理法

内耳炎の予防は、外耳炎の段階での早期発見・早期治療が最も重要です。

日常的な耳のチェックポイント 👂

毎日のケアで以下の項目を確認しましょう。

  • 耳の内側の色(健康な薄いピンク色か)
  • におい(酵母のような甘い匂いや悪臭がないか)
  • 耳垢の量と質(過度に多くないか、色は正常か)
  • 赤みや腫れの有無
  • 犬の行動(耳を頻繁に掻いていないか)

適切な耳掃除の頻度と方法

健康な犬の場合、過度な耳掃除は逆に耳毛の増生を促すため注意が必要です。

  • 健康な犬:月1~2回程度
  • 外耳炎の既往がある犬:獣医師の指導の下で週1回程度
  • 使用する清拭剤:犬用の専用製品を使用

シャンプー時の注意事項

入浴時は耳に水が入らないよう、コットンで耳穴を軽く塞ぐなどの配慮が必要です。水分が残ると細菌の繁殖環境を作ってしまいます。

基礎疾患の管理

以下の疾患がある場合は、積極的な治療が内耳炎予防に直結します:

動物病院受診の判断基準 🏥

以下の症状が見られた場合は、様子を見ずに早急に受診してください:

緊急性の高い症状

  • 耳から膿や血が出ている
  • 耳が大きく腫れている、熱を持っている
  • 頭を激しく振り続ける
  • 耳に触れると激痛を訴える
  • 強い悪臭がする

経過観察可能な症状

  • 軽度の赤み
  • 少量の耳垢増加
  • 時々耳を掻く程度

ただし、症状が悪化する場合や3~5日で改善が見られない場合は受診を検討してください。

予防における飼い主の心構え

内耳炎は一度発症すると長期間の治療が必要で、神経症状が残存するリスクもある深刻な疾患です。「たかが耳の病気」と軽視せず、外耳炎の段階で徹底的に治療することが、愛犬の健康と生活の質を守る最善の方法です。